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アニメージュ・スペシャル『GaZO』VOL.2【特撮リレー対談 川崎郷太×庵野秀明】

庵野 僕が「ガメラ3」のメイキングを撮る趣旨としては、日本の特撮の総括とまではいかないんですけど、現状認識ぐらいはしておこうというのがあったんですよね。それができると、 この 先の方向性みたいなものに対して、 どうすればこの先よくなるのかなあとか少しは見えてくるような気がしたんです。 それと特撮周辺のうっとうしそうな環境も、できることならルポルター ジュしておきたいと思ってましたから。【41】

庵野 日本の映画でこれから先メディアとして生き残ろうと思ったら、イベント・ムービーしかないと思うんですよ。つまりテレビの延長とか、あとは最初からお祭りとして打ち出さない限 り、客はもう劇場には来ない。そういうところまで来てしまっていると思う。 日本映画というだけでもう何かレッテルが貼られてしまっているところがありますからね。【41】

庵野「平成ゴジラシリーズ」なんか、名前にあぐらをかいて映画を作っていた 感じがしましたからね。要するに一時期の「ガンダム」と同じですよ。「ガンダ ム」という名前がつけば、何でも売れるから中身に対する切磋琢磨というのが、 まるでなくなってしまったんですよね。 【41】

庵野 宮崎アニメが何で当たるかとい ったら、男が女の子を誘って外さない 映画だからなんですよ。 映画が当たる秘訣というのは、そういうところにあると思うんです。 「タイタニック」なん かまさにそうですよね。むしろ女のほうが「あれ見たい」って誘うでしょ。 今、 映画は1800円ですから、男が両方 払ったら3600円。3600円払って2時間つぶして、それでつまらなかったら、その後のフォローは大変です よ。3600円の投資に見合うだけの快楽に導いてくれるスタンスというものを、そこで与えて欲しいはずなのに、 3600円損するわ、その後の食事はまずくなるわ、肝心かなめのコースには行けなくなるわでえらい騒ぎですよ。 【42】

庵野 「ガメラ1」は、確かに砂漠化していた特撮界に、いきなりポンとオアシスのように出現したという感じはありましたからね。 【42】

川崎 本当にポンッと出てきましたか ら、見ていてびっくりしました。

庵野でも樋口はあれに人生かけてましたから、当然といえば当然の結果なのかもしれない。古い言葉ですけども、 あの映画で僕は樋口の男を見た気がしたんです。 初号の時にこっそり紛れ込 んで見てきたんですけど、泣けました。 樋口の仕事に泣かせてもらったという感じがありましたから。【42】

庵野 僕が宮崎さんのところで仕事をしていた時に言われたことなんですけど、多分、毛沢東の言葉だったと思うんですけどね。「何かを成し遂げるためには、三つの条件がある。その三つが そろっていれば、 成功する」って言うんです。その三つというのは、”無名であること”貧乏であること若者であること、なんです。 「ガメラ1」はこれが多分そろっていたんじゃないかと思うんですよね。みんな貧乏で、無名で、若かった。だから成功した。【43】

庵野 僕、最初の「エイリアン」 って、すごく好きなんですけど、あれも着ぐるみですよね。ああいう着ぐるみが、なぜ日本にはないのかって、公 開された当時は思ったんですよね。

最初の「エイリアン」しか好きになれなかったんですよね。あとは全部駄目なんです。特に「エイリアン2」と か、「俺のエイリアンをこんなふうにしやがって」という感じがあって(笑)。 何か仮面ライダーの再生怪人みたいで、嫌だったんですよ。 【43】

川崎(笑)。でも「エイリアン」は当たりましたね。「3」で終わったと思ったら「4」まで作られて、すごいですよね。

庵野そうやって先端文化をいくアメリカにしても、日本にしても、作り手は、もうリサイクルの時代に入っちゃってますよね。この間、ワイドショー かなにかで、どこかの教授が「リサイク ル文化」っていうことを言ってたんですけど、これはいい言葉だなって思いました。現在の「ウルトラマン」にしても、 「ガンダム」にしてもリサイクルですか ら。【43】

庵野 結局、僕らが子供のころ見て乗り損ねたと感じていたものに、大人になって作り手として参加しているだけなんですよ。だから何か新しいものを作ろうと考えた時に、僕らは最初から作るということをしない。でもそれは仕方がないことだと思うんですよ。 「ウルトラマン」を見て育って、「ウルトラマン」みたいなものを作りたいと思って 特撮業界に入れば、その人がやりたいものは「ウルトラマン」なんですよ。今、 円谷プロがやっていることはそういうことだと思うんです。だから僕の書いた「ウルトラマン」を見て下さいという のが、「ティガ」だったと思うんです。それは僕らの世代の宿命みたいなものだ と思うんですよ。この呪縛からは決し て逃れられない。本当はその鎖を断ち 切りたいところではあるんですけどね。【43】

庵野 僕から見れば特撮ってもう沈んでいく船なんですよ。 タイタニック号 に乗っているようなものです。 【43】

庵野 「ガメラ」にしても、根本にな っているエネルギーって、本当は「ゴジラ」で何か新しいことをやりたいのに、 何もできそうもない。だったら「ガメラ」をやろうっていうところにあるんじゃないかと思う。それは僕から見れば、 「ガメラ」を「ゴジラ」の代用品として使ったということでしかないんですよね。 金子さんにしても、伊藤さんにしても、 樋口にしても、本当にやりたかったの は、「サンダ対ガイラ」だと思うんですよ。あれをやりたいのに、チャンスがない。しかも東宝より大映のほうが自由度が高い。それじゃあ大映で自分たちの好きなことをしようっていう感じだったんじゃないかと思うんです。だとしたらはっきり言って彼らは 「ガメラ」の名前を利用しているだけだと思うんです。でもそれだけの報いを彼らは受けていると思います。 だってガメラはキャラクターがカメなんですから。本人たちがいかにその世界観でカメを否定しようが、僕から見ればただの立ってるカメなんです。 カメが立っていて絵になるかっ ていうことですよね。【44】 

庵野 だから伊藤さんと、金子さんと、 樋口が持っている真面目さが、あれを 紙一重でギャグにはしなかったんだと思うんです。ほかの人がやっていたら、 多分ギャグになっていたんじゃないかと思います。所詮、カメですから。それを凌駕するだけのパワーをあの3人が 持っていたということだと思うんです。【44】  

庵野 つまり何とかカメにしないようにしようという意図的なものが、 画面に反映されているんですよ。それが紙 一重でギャグにしなかった。【44】

川崎 子供はいわゆる昔ふうに怪獣プ ロレスというのが見たいんでしょうか。

庵野 もうそういう感覚はあまりない と思います。 

庵野 だいたいプロレス自体がもうショーとしてすたれかかっている感じがあるじゃないですか。 「ウルトラマン」 が時代遅れだと思う一つの理由は、カで解決しようとしているところにある と思うんですよ。怪獣を光線でやっつけて終わり。要するに力なんですよね。 でも今は力じゃ何も解決出来ない複雑な世の中ですから、その現実とのギャ ップがすごく大きいんじゃないかと思うんです。 【44】

川崎 絶対正義がない時代なのに、ウルトラマンが絶対正義だと言っちゃうところでのお話が作りづらいんだろう と思いますね。 

庵野 確かに、そういう妙な決まりごとがあると話は作りづらいですよね。

川崎 ウルトラマンの存在自体がうさ ん臭いという気がしますよね。 

庵野 ウルトラマンという存在、ヒー ローという存在が、今はもうちょっと 厳しい感じがしますしね。だからもう単体ヒーローはちょっとあり得ないと思うんですよ。まさかウルトラマンを 神にはできないですし。【44】

庵野でも特撮ファンから見れば、ウ ルトラマンは神様みたいなものなのかもしれませんよ。 

川崎 僕はそれで叩かれたことがありました。これじゃあウルトラマンが人みたいじゃんって言われて(笑)。

庵野 特撮ファンってそういうところ があるんですよね。初代の 「ウルトラマン」と「ウルトラセブン」しか認めてないんですから。そういう人たちは、「帰っ てきたウルトラマン」をとことん 駄目だと言うんですよ。それって何でかなあとずっと思っていたんですけど、 要するに「帰ってきたウルトラマン」っ て、神様じゃないんです。人なんですよね。だから駄目なんだろうなあっていう結論に達したんです。【44】

庵野 評論家ってサポーターですからね。自分たちがコアになれないからその周辺にいて、何とか自分たちのアイデンティティを、そこにしがみついて保とうとする人たちが評論家なわけですから。 「ウルトラマンティガ」は最終回で、 誰でもサポーターになれる。 誰でも光になれるっていうことを具現化していたじゃないですか。だからそういう人たちに受け入れられた。 

でも実際にはそんなことはないんですよ。 才能ある人間しか光になんかなれないんですから。 だから「君もあなた もウルトラマン」って、最後に言ってましたけど、あれってJリーグを応援しているサポーターが、選手がゴールキックを入れた瞬間、自分が入れたような気持ちになるのと同じことだと思うんです。 つまりそこに同化することに よって、自分のアイデンティティを保 つことが出来る人たちなんだと思う。【44】

庵野 あれは「ウルトラマン」を作りたかった人たちが、 ウルトラマンになるにはどうしたらいいんだろうというこ とに対する答えだったんだと思うんです。それがウルトラマンと同化すると いうことだったんでしょうね。【44】

庵野 特撮ファンにしたら、この世の中では生きていけないからウルトラマ ンに何とか救ってもらいたいということなんですよ。 【45】

川崎 本当にウルトラマンに来てほしいんでしょうね。 

庵野 そうだと思いますよ。もしくは 自分がウルトラマンになりたいんでしょうね。「俺にフラッシュビームがあれ ば・・・・・・」という感じだと思います。 そういう感覚は、僕も持っていたんですけど、今はそれが嫌になっちゃった。 そ れで脱落したら、脱落組に烙印を押されてしまった。だからそういう人たちには「エヴァンゲリオン」は絶対受け入 れられないと思いますよ。「エヴァンゲリオン」って、その部分の否定ですから。そういう自分がいることを認めた 上で、否定していますから。何か別の ものが欲しいという人たちには変革は 許せないんですよ。 特撮ファンがヒス テリックに「エヴァンゲリオン」を批判するのは、多分そういうところなんだろうと思うんですよね。【45】

少なくとも「ティガ」の最終回を好きな人は「エヴァンゲリオン」は 駄目だと思うんですよ。僕が「ティガ」 で納得できた話って、結局、川崎さん の作品だけでしたから。だから僕にとって「ティガ」は川崎郷太だったんです。 【45】

庵野 「ティガ」も、「エヴァンゲリオン」も、 認めているところは同じだと思うんです。ただ答えの出し方が違う。「ティガ」 は夢に逃げていって、「エヴァンゲリオン」は現実にもどろうとしたということ だと思うんです。 それで僕はまるっきり夢物語を語るというのは嘘だろうと 思ってますから、そういう「ティガ」の 最終回みたいなものを見た子供には、期 待するなって言ってやりたくなるんですよね。しかも「ティガ&ダイナ」では、 「そうか、あれは夢じゃなかったんだ」 と、まるっきり「ティガ」の最終回を否定しているようなことを言っています からね。ちょっと許せない感じがあるんですよ。【45】

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