女性漫画家:二宮ひかるさんと庵野監督の対談。
インタビュー日時:1997年7月14日夕刻(夏エヴァ完成直後)
庵野:夏エヴァようやく終わったので今は実感あります。ラブ&ポップは明日から仕事開始。【69】
庵野:ラブ&ポップは自分からじかに原作者に話を持って行った。原作者に直接会って。【69】
二宮:女の前で泣ける男はすごい
庵野:僕は女性の方がすごいと思う。女の胸で泣くっていうのは、オトコっていつまでたってもやっぱり子供でしかないってことだと。
二宮:女も子供ですけどね。そのやり口が巧妙になりうだけで。
庵野:でもやり口が巧妙になるのはムダがなくなるということで、それが大人になるということなのでは。巧妙さを手に入れるというのはそれはテクニックですから。少なくともそのことに関して理解している。それが大人だということと思うんですけど。(ミサトさんに通ずる話だなって。15話っぽいというか)【70】
編集:庵野さんは猫背のイメージが強くて。「ああこれは庵野さんなのかな」って思ってたら「いやこれはウルトラマンが云々」って話を聞いたんですが。
庵野:まあ、ウルトラマンというのはヒト様に説明するのに便利だから使ってます。自分が好きなのが猫背なんですね。自分の形になっちゃうんです。だから僕が描くと胴が太くなる。時々、絵の方も描くんですが、 初号機とか描くと胴太になってあんまり好きじゃないですね。【70】
庵野:成功とか失敗とか・・・うーん….. 何か無責任みたいな感じになっちゃうかもしんないけど、あまり考えてないっス。僕が最低限確保しなきゃいけないのはですね、やってくれた各スタッフの人が、やって損したというか、やんなきゃよかったとか思わなきゃいいんですよね。まあそれがひとつと。あと、商業作品ですからお金を出してくれた人が損さえしなけりゃ…。 大儲けはそりゃ時の運ですから。 出してくれた金額に対して最低限の保証さえしてりゃいいんですよ。ビデオが2万本売れてそれでペイできるんだったら、最低限 2万本売れるものにはしておかなき ゃいけない。それが4万売れるか10万売れるか20万売れるかはホント時の運みたいなもんですかねえ。 世の中には当たるアニメでなく当たったアニメがあるだけなんですから。それは結果論ですね。ただ最低の保証 だけはしなきゃいかんと思いますね。僕が言えるのはその2点ですね。【70】
庵野:僕が一番イヤなのが自分で完成形態が真っ先に見えちゃうって事なんですよ。そんなもの、自分で面白いと思わない。これから先どうなるんだろうという方が面白いです。(だからエヴァはああいう作り方をしたんだなと。NHKのシン・仮面ライダーの製作ドキュメントでも似たようなこと言ってたなぁ)【72】
庵野 『エヴァ』に関しては失敗への恐怖というのは無かったですけどね。【72】
編:このあいだある男性作家と作品制作の進め方について話をしてて、 彼の作り方を聞いているうち、「ああ、 それはトンネル開削だね」と。たいがいの人はビルの建設なんですけど。 基礎工事から鉄骨組んで、外壁付けて内装やって…。
庵野:人に聞いたんですけど、 土木と建築というのは全然違う。似たように見えるけど本質が違うそうです。
編:庵野さん自身はどちらだと?
庵野:土木じゃないですかね。 設計図なしにビルは建たないですよ。トンネルも出口を決めるやり方はありますけど、「どこに出てもいいや」っ てのもあって。
編:なんか脱獄囚みたいですね。
庵野:あ、いや、僕の場合トンネル がですね、どっちかというと掘ってる事に意義があるんで、どこに出るかというのはそんなにないんですよ。 掘り進んでいるところに意義がある。時間とか経済力とか尽きたら、そこで中断もオッケーなんです。出口に 出るというのにそんなに価値を感じない。最終的にそりゃ出た方がうれしいですけど。万が一出なくてもオ ッケーなんです。じゃなかったら×印もせずにトンネル掘るなんて作業できないし、出口が無ければスタッフを引き返させればいいんですから。 出口は片っ方はあるし、「ここまでだ」 と思ったら「すいません引き返して下さい」と言えばその山からはとりあえず出てこれます。それが最低限の保証なんです。だから僕がやっちゃいけないのはそこで落盤だけはさせちゃいかんと。出口の方に岩がドドッと落盤して詰まったらそれはもう保証が無くなる。最低限、引き返 してそっちに出てこれるという事だけはできるようにしておかないと。 もうひとつは掘ってるさまがそのまま芸にならないといけない。トンネルが貫通する事よりも掘っている姿そのものが面白くなきゃいけない。【72】
庵野 現実の中の真実と作り事の中の真実って、作り事の中の真実の方がより真実に近く感じるんですね。【72】
二宮:庵野さんの日常はどんなですか?
庵野:感覚的には仕事に逃げている感じですかね。
二宮:え、逃げているんですか。 追われてるとか溺れてるじゃなくて?
庵野:いわゆる日常が・・・飯を食うとか、そういう生活感というのが自分の中に存在しないので。まあ、仕事だけという。ちゃんとした生活をしながら家庭を持ち、子育てをしながら仕事をしている人の方が偉いという気がしますね。そっちに向けるエネルギーを全部作品にぶつけているから人様にウケがいいだけで。 そのバックに何か確固としたものが あるかというと生活基盤が全然無いという・・・現実ではなく夢の中にずーっといるようなもんです。【73】
二宮:「アンタちゃんと食べてる?」とか親から言われたりしないんですか?
庵野:ああ、ええ・・・家族という感覚が無いんで。正月とかたまに電話は入れますが、そういう感じじゃないですね。【73】
庵野:彼女がいたときも横に置いてましたね。で仕事仕事。【73】
二宮:男の人はどういう気持ちで女の人と付き合うのかなあ。
庵野 まあ、基本的には母親の代わりですね。【74】
編:庵野さん割と女性誌読まれますよね。
庵野 女性誌しか読まないです。【74】
庵野:(自分は)生きる事にそんなに執着してないからでしょうね。少なくとも喰う事にはほとんど執着ないですから。喰う事に執着が無いというのは生きる事に執着が無いのとほとんど僕は同 義だと思ってるんです。
二宮:お肉と魚と卵がダメなんですよね。
庵野:卵は大丈夫です。
二宮 いかん、小さい子供の偏食と一緒にしちゃ…(笑)。
庵野:いや、子供の偏食から一歩も外へ出てないですよ。だから卵焼きが好きという… 小さい子供と同じなんですよ。
二宮:小さい頃というと私も肉と魚と野菜が嫌いだったんですよ。で、 何を食べてたかというと白いご飯が 一番好きで。
庵野:ええ。
二宮:その白いご飯に塩をかけて食べるのが一番好きでした。
庵野:あ、僕はマヨネーズです。【74】
庵野:お腹空いたら喰いますけどそれでも雨が降っていたらですね、雨の中濡れてまでコンビニ行こうとしないですよ。あまり帰らないですが、 お正月休みとか帰るじゃないですか 自分のアパートに。するとアパートの近くにコンビニ無いんで、3~4 日間喰わないですよ。(それはおかしいだろwwwwww)
二宮:うわ~。3日間4日間ですか。
庵野:ええ。メシを喰いに外へ出るというのが鬱陶しいんですよ。だったら喰わない方がいい。アパートではもう7~8年位お湯沸かしてないです。冷蔵庫も6~7年開けてない。 だからどうなってるか分からないで す。電源切ってないんで大丈夫ですが、中に何が入ってるか・・・たぶん7 ~8年前のビールじゃないかと思う んですけど。
二宮:あの…氷おすすめですよ。いつも食用に氷作ってるんです。 小さめに、口に入りやすいように。 水道水で作って・・・あのカルキ臭さがキモチイイんですよ。
庵野:氷は子供の頃好きでしたよ。【74】
二宮:肉とか魚とかがキライなのは生理的嫌悪ですか?
庵野:それもあると思います。皿に載ってるのが死体に見えちゃう。 「あ、 魚が死んでる」 「牛が死んでる」。 まだ肉はパーツですから全体像を想像しないですけど、魚は全体像がそこにあるので死体にしか見えない。物とか生き物が好きじゃないんだと 思うんです。好きだったら食えるんです。 生き物が嫌いなんですね。
二宮:あ、でも嫌いだと言われるほうが解りやすくていいです。 「かわいそう」と言って食べない人はグーで 殴りたくなりますけど。
庵野:かわいそうとは違いますね。 嫌いなんです。
編:それは人間も含めてですか。
庵野:好きか嫌いかどっちかといえば嫌いだと思います。自分を含めて。
編:それにしても給食のとき苦労しましたでしょ。食べ終わるまで教室に残されたクチで。
庵野:ええ、そうです。残されたクチです。
二宮:お昼休みの間みんなが外で遊んでいるのに一人ポツンと机に残って食べさせられてる食べるフリをしているという感じですか。
庵野:ええ、食べなかったです。
編:それで先生が諦めました?
庵野:ええ。熱心な先生がいて、僕が給食を食べ終わるまで本人も帰らない。それでズーッと夜の8時までなって。結局食べないで、その帰りにチョコレートくれたのでラッキーでした。 小学校2年の時です。(草)
二宮:嫌じゃありませんでしたか? 「先生なんで早く帰ってくれんのやろ」って。
庵野:いや別に。「食え」と言われて「いや食べません」。「食べろ」と言われると余計に食いたくなくなる。 意地っぱりだったんですね。(この話はたびたびしてるけど本当に草が生える)【75】
庵野:僕のいた小学校は市のモデル校で、なんか教育委員会が思いついたらここで試すという。そこで「偏食児童をなくすシステムを作る」ってことで、全校から選りすぐりの偏食児童を空いている教室に隔離して。 そこで先生がマンツーマンで指導する。1年から6年までズララララーと各クラス1人ずつで1か月くらいやったのかな。テレビが取材にきたの憶えていますから。その中で唯一の失敗例が僕なんですよ。(流石に草)
二宮:つらくなかったんですか。
庵野:つらくないです。食い物じゃないですから。食える物が食えないというのはつらい事ですけど、最初から食い物じゃない。食い物として存在しないんです。【75】
庵野:ネーチャンにもあまり興味ないです。風俗行かないし。最近はただ慣れてですね、おネエサンからいろいろ話を聞くのが面白い。
二宮:それは自分から水を向けるんですか、それとも向こうから問わず語りに話してくるんですか。
庵野:これにはコツがあって、ある程度自分の事をサラサラと喋るんですよ。すると安心してバーッと喋り出す。そういう人の話というのは面白いですよ。自分で考えられないような人生っていうのがありますね。 ああ、面白いなあと…【75】
庵野:これは極論になってしまうんですけど、援助交際と結婚というのは事象的には変わらんと思うんです、相手が好きかどうかという大きな違いがあるだけで。男の方は女にお金を渡して貢ぐことによって自分の存在感というか価値観を認識してるわけですから。お互いにそれで納得してれば僕はそれでオッケーだと思うんですけどねえ。(EOEのミサトさんみたいなこと言ってる)【75】
庵野:セックスだけは相手がいなけりゃできないですから。自分も求めてるし相手も求めてる、そういう事ですよね。まあ一番簡単な方法論として、 相手を必要とする行為として、誰にでもできる。
二宮:セックスしたり恋愛したりというのは、とにかく自分がなにがしかになるための一番、最短距離なんですよね。
庵野:ええ、自分の存在を認識できる最短距離。おまけに快楽まで伴う、 こりゃグーですよ。ハマる人が多い のも解ります。僕も生まれて初めてセックスしたときには、「ナルホド!」 と思いましたね。
二宮:ナルホド、ですか。
庵野 ナルホド、です。 それまでわかんなかったですけど、若い頃初めてそういう事をした時に、「あ、ナル ホド、こりゃみんな一生懸命やるわ」 っていうのが最初の感想なんです。【76】
庵野:ちょ っと前にスピリッツで描いていた相原 コージさんのヒトコマ漫画で「今のオナニーはしないほうがよかったな」と いうのを見た時は「なるほど!」(笑・ 膝を叩く)と。 ハズレのオナニー。
二宮:なんかウロコが落ちますねえ (笑)。
庵野:毎回良いというわけではないですね。
二宮:すいません、ソレは射精してもですか(笑)。
庵野:ええ。そうです。射精感とい うのも、いいセックスというのもあると思うし、オシッコと同じで出すだけという時も・・・。いい歳して夢精するのもイヤだし「ここらで出しとかな いとマズイかなあ」という――それ は排泄物と変わんないですね。【76】
庵野:戦争に行くとまともな神経してる人は参るでしょうね。普通人間はヒトを殺すのがあんまり好きじゃないので。一次大戦や二次大戦から帰ってきた兵士はけっこう参ってたと聞きます。【76】
庵野:最前線に行ったらたぶん何もできないですけど、一番後方で作戦指揮を立てるんだったら僕はかなり 人を殺せると思います。実際に(殺人の現場を)見ないと、この作戦で向こうの兵士が何万人も死ぬし、こっちの兵士も何万人も死ぬんだなあと思いながらもそういう作戦を立てて実 行するでしょうね。
二宮:そうか。もう(監督という) 今の普通の生活の上でも指揮官なんですよね。みんなに死ねと言ってる・・・。
庵野:ええ。そのためにイヤな思いはするんでしょうけど、まあ、淡々とやってるんじゃないかなあ。【76】
庵野:アニメの世界は責任の所在がハッキリしてますね。
庵野:監督というのがそういうもんですからね。フィルムは監督のものですから。この民主主義の世界でめずらしく残っている独裁ですからね。 監督は絶対です。
二宮:昔からそうなんですね。
庵野:全ての悪評も、感動の声も、 監督のためのものです。そこには脚本が良かったとかは存在しないんですよ。そのホンを使った監督の手柄にしかならない。その分失敗した時も監督が全てを負うわけです。【76】
庵野:僕の周りにいる人は監督なんかやりたくないって言ってます。
編:庵野さんを見てるととりわけそう思うんですか。
庵野:みたいですね。【76】
庵野:作り事の中のリアリティというのは突き詰めてみたいですね。もちろん、 見てる人や読んでる人が共感するというのがリアリティにつながるという単純な方程式があるんですけど、 その方程式の裏にあるのは何かと最近思うんです。虚構と・・・何だろ・・・虚構と幻想と現実というのがありますよね。フィルムの、映像の方でいえばドキュメンタリーとフィクションとイリュージョン。アニメというのはイリュージョン、全てが作り事ですから。どこにも現実というのは無いわけです。セルアニメーション見て、こんな子がほんとに存在すると思う人は一人もいないはずなんです。 セル画ですから。実際にその人が存 在して自分のチンチン舐めてくれると思う人はいないはずなんです。でもそう思い込もうとする人は山のように…。【77】
庵野:『エヴァ』は アニメなんですよ。その中にあれだけのリアリティをみんなが見い出すというのは一体何だろう。それは共感する部分が多かったんだろうと。 自分の中の現実と照らし合わせた時にマッチングするものがあったんだろうと思います。
庵野:全部作り事の世界とドキュメ ンタリーが対立した時にどっちが勝つか、まぁ方法論の違いでしかないんですけど。フィクションがドキュ メンタリーに勝てる瞬間というのは何だろうと。やっぱり原一男さんの 『ゆきゆきて、神軍』とか観ると、かなわんと思いますよ。本物の強さというのは常に存在しているんだと。あれは本物ですね。確固とした真実なんです。フィクションの中の真実ーーー本物の瞬間というのはなんだろうと。最近はそっちの方の疑問もあって実写をやろうかと。方法論の影から何がでてくるのか。
二宮 ブラックボックスみたい。
庵野:今回の映画(夏エヴァのこと)で、今セルアニメでできる、思いつく事はほとんどやっちゃったんで(笑)。【77】
二宮 うーん、ニクイ(笑)。こういう風に言えちゃうところが。
庵野ちょっと今、ネタが無いんで(笑)。実写やらないと。次ができない。『エヴァ』始める時に考えたのは 40歳になるまでは連チャンでいく。 以前、4年も壊れてたんで(笑)。今が旬だと思うんですよ、35から40ぐらいが。先達を見ても全員がそうですね。高畑勲さんも宮さん(宮崎駿) も富野由悠季さんも出崎 (守)さんも石黒 (昇)さんも。一生のうちいいものが 作れるのはあと数年と思うんですよ。 あとはその後の下り坂をいかに押さえるかですね。ピークはもう来ると思います。ひょっとしたらこれが、 今がピークかもしれない、という恐怖はあります。「庵野さんはエヴァンゲリオンが一番良かったね」と言われるのはしょうがない事だと。ただ、 そう言われないように頑張ろうと。【77】
庵野:あまり自分が長生きしてるイメージが無いので、ヒト様の考えるような恐怖感というのが無いんですね。
二宮:パッと咲いてパッと散ろうっ てやつですか。
庵野:ええ。なんか、死が訪れてもそりゃあそういうもんかあというのがある程度あるからなあ。
編:もういっか、と思う瞬間ってあります?
庵野:エヴァに関してはもういっかあと。こないだ終わったんで。もういっかあと思ったんで次に移れます (笑)。あまり死ぬ事に関して云々というのはイメージが無いんですよ。【77】
庵野:僕は自殺を肯定してい るわけじゃないです。そりゃ人間死ぬよりは生きているほうがいいです よ。ただ終着点くらいは選択の余地があったほうがいいんじゃないかと。 しかし、世の中にはまだまだ生きたくても死んでしまった人がたくさんいますからね。中学からの友人がガンで死んだ時は一番こたえましたよ。 29の時なんですが。あの時は月並みな考え方ですがそいつの分まで生きようと素直に思いましたね。「なんでコイツがここで死ぬんだ」と。何にもまだしてないのに。
もう一人、2年前に。 こっちは交通事故で。これは運が悪いんですけど。 ウカツな奴だったからなあ……。 両方つらかったです。【78】
二宮:不穏な話ですけど、庵野さんに死なれたら現場の方は困るでしょうね。指揮官なわけだし。私、何も 知らなくて、この前まで、庵野さんがガイナックスの社長だと思ってました(笑)。
庵野:社長職はヤですね。
二宮:監督はオッケーですか。
庵野:社長は(社員の)生活の保証をしなければいけないじゃないですか。 でも監督というのは作品の保証だけすればいいんですよ。あとはそれに見合うだけのギャラを持ってくればいいので。生活の保証というよりは、 仕事に対する報酬の心配だけーーーあと、精神的満足感。その仕事をやって良かったという。それを与える事に専念すればいい。それが社長になれば、会社転がすために 「次のアニメは何をやろう」という事を考えなきゃいけない。【78】
庵野:僕が守るのは作品だけ。 イコール、スタッフ。 手伝って くれた人が嫌な思いをするのだけは避けたい。こうして作品が当たって、 人様から褒められたりするというのはスタッフの耳にも良いと思うので。自分はそういう意味では代表でしかない。そこには独裁というシステムも敷いてますが、それが映画という か映像というものなので、失敗しても監督の責任だし、うまくいっても監督の責任だし。それだけは確保しとかないと何にもできない。【78】
庵野:『エヴァ』に関していえば手を抜ける状況というのは存在しなかったから。努力は売りにならないですよ。「こんなに努力したのに」というのは僕は変だと思うんです。「こんなに一生懸命やりました」と言われても「そりゃ一生懸命やるのはアタリマエだ」と。【78】
庵野:ええ。脳内物質出まくりといえばTVの最終2話です。あの辺は楽しくて楽しくてしょうがなくって。 あの時間は良かったですよ。スタッフも大変でしたけど。あれを3日で作るというのはすごいスタッフだと思います。物理的に可能な限界なところまでやってあそこまで出来てるというのは我ながらすごいと思いま す。その分の揺れ戻しというのはそのあとガッシャーンと来たんですが、 あれもまあ今考えればいい経験で、 ヤク(薬)も射たずにこんなダウンな状態になれるなんてすごいと。その時は本当に嫌でしょうがなかったんですが、今考えるとああいうのもなかなかないと。【78】
二宮:一度は経験したいと思います。
庵野:まあ、こういうのは集団作業ですと一層デカくなりますよ。宮さんにもそこは褒められました(笑)。 面白そうだといえば、舞台やAVとかもやってみたいです。
二宮:制作費あまりかけないような?
庵野:今度の映画もそんなにお金かけないでやりたいっス。
編:制作期間も?
庵野:実写のいいトコはそれなんです。短期集中ですから。3か月で30 分のアニメは作れませんから。その分体力使いますけど。 この夏は1日3食喰わないと持たない(笑)。【78】
庵野:実写は自分が倒れたら全部止まっちゃうじゃないですか。アニメの場合、監督って最後尾で検閲する、 上がってきたものチェックしてNG出したりOK出したり。NGの場合は自分で描いたり他人に再配したり …。実写の場合は先頭車両です。ラッセル車みたいなもので。僕が最初にそこに行かないと。「じゃここにカメラ置いてください」と言わないとカメラマンは動けない。そこで僕がバテて 「じゃあその辺でやってて下さい」というワケにはいかないですよ。【78】
編:暑い日が続きますから・・・でも夏という季節が好きじゃないですか?
庵野:夏には思い入れが強いですね。 夏が好きなのはただ単に子供の頃夏休みがあったという記憶のせいかもしれませんけど。【78】
編:庵野さん鉄道が好きですよね。
庵野:早く500系に乗りたいです。
編:実写の撮影が終わる頃晩秋になったら東京まで来ますよ。 庵野:それまで待つしかないです。 500系ってHOもNも出ていないですよね。老後の楽しみにとってあるんです(笑)、鉄道模型は。あれは金がないとできないですね。あれを広げるだけの場所と、買い揃えるだけの経済力を手に入れないと金持ちの道楽ですから。
編:あと作る時間ですよね。絶対、レイアウト凝りそうだから。いや、 庵野さんの口から「老後」という単語聞いて安心した(笑)。
二宮 うん。不思議なというか、かわいい感じですよね。
庵野:老後の趣味はそれです。 それまでは鉄道模型を立ち読みで(笑)。 でも500系が出たら買うでしょうね。ついに買う時が(笑)。買い始める と怖いんです、LDがそうですけど。
編:どんどん買っちゃいましたか。
庵野:他にお金遣うあてがないですから。【78】
二宮:ここに来るときに思ってたことって単純で、もうエヴァンゲリオンの話はイヤってほど聞かれて、3回も4回も同じことをしゃべってうんざりしているだろうから…って。
庵野:いや、それはこれから始まるんです(笑)
二宮:あっそうなんですか(笑)
庵野:だからもう紙に書いて配ろうかと(笑)【78】
【感想】
見どころとしては「エヴァの猫背はウルトラマンからではないという話」(監督が猫背が好きだから)、よく話題に上がる庵野さんの偏食の話(卵は食べれるらしい)とヤバすぎる私生活について、監督というのは独裁だが失敗も成功も全部監督が背負うという話、等だろうか。(全部見どころだが)
『ガイナックスインタビューズ』よりも先に読んでいたのだがまとめるのを忘れていたので新年早々あげたという話。これで全作業終了。約5年かかった。(エヴァ17話の電車の中の冬月とゲンドウの話並み感)