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アニメスタイル第1号 庵野監督ロングインタビュー

(インタビュー日時 1999年12月2日)

・エヴァの前にセーラームーンやVガンダムを見ていたのは「検証のため」(近代史の勉強に例えている)【78】

・セーラームーンの良さは「緩い世界観」。要は「遊び場を提供すればいいんだ」と言うことが分かった。
 個性的な分かりやすいキャラクター配置と遊べる場所が用意されていることでファンがそれを使って遊ぶことができる。それが人気の秘訣だと思った。
 (この時に小黒さんが「マコちゃんに好きな先輩がいたという情報はあるけれど、どんな人とかはわからない」とかですね。と返している(博識すぎる…)【78~79】

・エヴァでは世界観にブラックボックスを作るようにして、「そこは自分たちで考えて遊んでみてくれ」と言う風にしてある。【79】

・セーラームーンは「なんで、この人とこの人はこんなに仲がいいんだろう」という緩さもある。その理由もファンが考えられるようになっているのがセーラームーン。それがヒットの秘訣だったと思う。【79】

・綾波の方向性みたいなのを決定的な形にしたのは薩川さん。5話の脚本の段階で。綾波はどういう暮らしをしているか等の地に足が着く感覚は薩川さんが作った。
 あと貞本さんの包帯姿の画の力も大きい。自分は分からなかったけどやたらと評判が良かった。【79】

・エヴァは効率論で作られている。【80】

・エヴァの2話の戦闘シーンはあそこのシーンがうまくいかなきゃその話全体が成り立たなくなってしまうぐらい大事なシーンだった。超うまい本田さんと吉成さんがあっていて、当時できる
 最大限のシフトでやっているシーン。あそこがコケたら話にならんというシーン。【80】

・エヴァはタツノコと約束して基本的に平均3500枚でやっていた。2000枚で済む話があれば次の話数には1500枚投入してもいいというやり方。(3500枚はTVアニメの平均的な数字)【80】

・総集編を2本入れる。総集編に新作を入れてもいいけど、そのための新作は500枚以下で抑えるという枠組みもあった。【80】

・8話に枚数を使うために4話の枚数はちょっと少なめにしとかなきゃいけないとか。【80】

・6話は打ち合いでのタイムサスペンスにすれば基本的にはほとんど「止め」で済む。アクションをしなくても緊張感を持続できる。6話は作画を外注に出すのが決まっていたから、できるだけ作業面で負担をかけたくないのでそういう話にした。【80】

・コストパフォーマンスでストーリーも、スタッフ配分も行っている。全話そういう風に作っている。【80】

・アニメージュ90年4月号でも言ったがアニメというのは「穴の開いた船」。 沈む前に港に着けるかというそれだけ。そのために排水作業をどうするかという、ダメージコントロールでしかない。最悪の事態を想定してそれに対処するためのシフトを作っておくだけ。それは組織論の基本。そしてそれは軍艦の運用思想(軍艦は敵の弾が当たって沈むというのを前提に作られている)と同じ【81】

・「アニメというのは情報なんだ」というのは山賀さんが王立の頃に言っていたこと。「庵野監督の制作運用的なものは王立の時に山賀さんがやってたのを踏襲してるだけ」とのこと。【81】

・王立はものすごい画の密度の情報量で客を圧倒するっていうのが狙い。【81】

・王立とは違いエヴァは基本的には地続きの感覚を残そうとして作っている。(現在の日本の延長線上の世界だということ)【81】

・現在の延長にすれば記号的に楽なんですよ。電柱を見せれば「見たことある」と思い客は安心する。緊張しない。そういう効果もある。【83】

・SFに出てくる電話はおいてあるものを説明するために「もしもし」と言わなくてはならないが、緑色の公衆電話を見せればみんな「電話だ」と認識する。それは客の認識力に対するコントロールである。【83】

・エヴァは「分かるもの」と「分からないもの」を意識して分けて作っている。 制作側が「これは分からない方がむしろありがたい」というところは分からないように作っている。
 死海文書だとか「そうか、そういうことかリリン」というセリフも「今カヲルが言ったセリフはよくわからない台詞なんですよ」という意図した情報であるということ。
 それに関してシンジが「よくわからないよカヲル君」という客の気持ちを代弁するというところは親切な作りである。「分からないことを言っているんだ」ということが分かりやすいため。【83】

・エヴァはビデオで録ってみる見るということを前提に作ってある。【83】

・だから、OPの情報量を多くした。細かく作った方が良いだろうと思った。そして、歌詞の一文字に対して1枚の画ぐらいの細かい曲合わせをやってみた。見た目の気持ちよさを優先した【83】

・近藤喜文と高畑勲という二大巨頭が組んであれだけの時間と手間をかけて作った『おもひでぽろぽろ』が自分にとって何にもリアリティがなかった。
 「セルアニメで細かいところを動きまで作って表現しようとしてもそりゃ実写には敵わん。そういう方向性は無駄だ」と気づいた【84】

・4話でミサトがシンジに激昂するシーンは「見せないで表現する」方法を取った。最初のフィルムではあそこでミサトの表情を見せていたが、「でもねぇ…なんかなぁ…表情変化もさして無くですね、三枚の口パクで、喋ったところで…」と思い三石さんの芝居に賭けた方が良い、顔を見せない方が「どういう表情をしているんだろう」と客が想像してくれるから表情をBLでつぶした【83】

・あそこは中途半端な潰しだとダメ。あそこまで黒くすることで「あっ、これは顔を見せたくないだ」という意図を分かってくれると思う。「ミサトさんは、いったいどういう顔をしているんだろう。怒ってるけど、悲しいんだろうな」とか想像してくれる。その想像した瞬間はセルアニメの限界を超えてると思う。【84】

・前述のミサトの顔のカットもそうだが、描かないことでその人が想像できる最高のものをそこに当てはめてくれる。想像の余地を残すということは必要なことだと思う。【84】

・音楽がかかると視聴者が安心してしまう。だから4話は音楽をわざとかけなかった【84】

・4話ラストでミサトとシンジが見つめ合うシーンでかかっている曲はバックノイズ。あのシーンはBGMだと保たない。あそこでバックノイズとして歌謡曲が流れると歌詞を聞き取ろうとする心理が働く。歌詞を聞き取ろうとしてしまうことで緊張が生まれるのを狙っている。【84】

・24話で第九がかかるのは「聞きなれたクラシックがあんなに派手にガンガンかかっていると見てる人間はそれに流されていく。それでテンションが上がっていく。第九は人の声だしものすごくテンションが高い。そういう風に感情的な部分やテンションまでコントロールしている【84】

・24話でイヤホンから流れてくる曲も第九なのは「中途半端はやめよう。徹底的にやろう」と思っていたから【84】

・エヴァ全体に関して「徹底的にやろう」と思っていた 【84】

・(22話のアスカと綾波のエレベーターのシーンについて)リアルに考えればもっと長い間になるんだけどアニメだとアレぐらいの間でも長く感じてくれる。実写だったら40秒の間なんてよくあること。間の内に入らない(実際にはあそこの間は50秒) 【84】

・夏エヴァの時は世の中の文字が全部明朝になっていたので「これはやめよう」と思い教科書体に変えた。(THE END OF EVANGELIONのタイトルやポスターの事) 【86】

・エヴァ明朝体の演出は「Mac様さま」とのこと。細かいところまで作れるし文字の変形もスゲェ楽。データをそのままフィルムで出力できるのも良かったといいことづくめだった。【87】

・実写は「アニメと違うもの」「異質なもの」というぐらいの印象しかない(イメージオンリーで作られているアニメの画との対比) 【87】

・他の媒体で言ってるのかは知らんけどガンダム5話(大気圏突入回)の予告をベタ褒め。かっこいいじゃないですかとのこと 【90】

・Vガンダムの予告はナレーションが本質の部分を言っているところが良かったですねとのこと。 【90】

・1stガンダムでアイキャッチが入るタイミングにはかなり影響を受けたと思うとのこと(9話でアムロの台詞の後にアイキャッチが入るところを見て「カ…カッコイイ」とのこと) 【90】

・カットが切り替わる時の気持ち良さにはこだわった。(カットに右に顔→左に顔→疲れてきた頃に真ん中にポンという手法等とのこと)【90】

・アニメはカメラが顔に寄ったらそれだけ情報量が減っちゃうからエヴァの場合は顔のアップをほとんどなくしているはず。(普通のアニメは顔のアップが多いから情報量を足そうとしてディテールが増えたりしがちとのこと)【90】

・エヴァの付け入る隙は「アニメなのによくできている」ところ(当時は現代よりもアニメは下に見られていたため)【91】

・「アニメだから見ない」という一般人のハードルを越えようという意識がエヴァにはあった。「この作品の話をしても恥ずかしいようにはしない」という具体的な目標もあった 【91】

・幾原さん「最終回で綾波レイが妊娠して、腹がデカくなっているというのをやってくださいよ。綾波ファンを裏切ってくれ。ホントだったら妊娠して腹がデカくなって子供産んだりして、
 年を取ったりするんだっていうのを思い知らせてやってくれ」みたいなことを言われて「そこまでせんでも・・・」と思った(笑)(庵野監督自身がそれを見たくなかったとのこと) 【94】

・もともと綾波は巨大化させるつもりだった(苦笑) 【94】

・「グロってあんまり好きじゃないんですよね」(えぇ…)【94】

・弐号機VS量産機戦は原撮の方がセルよりも迫力があってよかった。(一部がAirの予告に使われている)アフレコの時に緒方さんが「うわ~、エグ~イ」と反応していたが、完成したのを見た後に「あそこ、あんまりエグくなくなっちゃいましたよね」と言われて庵野さんもそう思ったとのこと 【94】

・バルディエルをダミーがボコボコにするシーンは「メシ時に見てる人が吐く」のが理想だったがセルだとなかなか嫌悪感は出ないなと感じた。【94】

・庵野さんが実写を撮ったのは「とりあえず川岸を変えてみよう」「ここの居酒屋、メニューの品を全部食べたから新しい店行こう」という感覚だった 【95】

・ワカメ影は古いと思ったのでエヴァでは全部修正した 【96】

・庵野監督の音のこだわりの話あり(DTS版劇場版DVDのブックレットやリニューアルDVD作成時のニュータイプへの寄稿でも同じことを言っている)【96】

・マクロスの時は影をいっぱい入れて金属の質感にこだわってやってたが、王立の頃あたりからセルにそれを求めるのはやめて音に賭けようという考え方に変わった【96】

・アニメーターは役者とカメラマンと画描きの3つの役職を同時に兼ねないといけないからすごく大変な商売(他のインタビューでも時々言っている)【97】

・カレカノの信号機のカットは心象風景を表している。黄色は「不安定」(どっちにしようかなってイメージ)赤は「止まる」青は「レッツゴー」【98】

・アニメファンとかその辺の人のポピュラリティは「メカと美少女」。メカと美少女さえ出てれば、基本はOKですよ。それは30年以上変わっていない(否定的ではなくて肯定的な言い方をしている)【98】

・カレカノもラブ&ポップも「メカと女の子」(電柱とか信号機とかがメカの部分) 【98】【99】

・ラブ&ポップで電柱を撮っている時は楽しかった【98】

・(変なアングルについて)ああいうカットを撮るのは「日常を見せるにしても普段見えない角度から見れば、非日常的なものとして映るから」【99】

・「『もののけ姫』にはフェティシズムがない」という話になったときに小黒さんが急に「ピカチュウってフェチっぽくないですか?」と言い出し、「ピカチュウのいいところはデブなところだよね。抱き心地が良さそうだよね」とか庵野さんが言ってる。
 「あれが細いとなんかもう一つだっただろうね」とも(先見性高い)【99】

・映画で基本的に興味の持続を指せることができるのは「この人は一体何をするんだろう」ということと、次は「どういうことが起こるんだろう」という2点 【99】

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