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アニメージュ1997年5月号 薩川昭夫インタビュー(DEATH編について)

「DEATH」編は、非常に「エヴァンゲリオン』らしい映画になっていて、驚きました。

薩川:その『エヴァンゲリオン』 らしいというのは、よくわからないんですよね。僕ら脚本家は、TV版の立ち上げのときから参加しているから客観的になれなくて。今回も『エヴァンゲリオン』らしい作品にしようとは特には思いませんでしたし。だから世間で言う『エヴァンゲリオン』らしさと、僕らとではギャップがあると思うんですよ。

なるほど。じゃあ、実際に仕上がったフィルムをご覧になってどう思われました? 脚本段階で考えていたものとのギャップとか。

藤川:そうですね。庵野さんもおっしゃってたんですけど、実際のフィルムは摩砂雪さんの世界だなあ、と。僕や庵野さんの匂いは、あんまり残っていませんでしたね。

――――――――えっ、摩砂雪さんの世界ですか?

思いがけないお答えですね。それはどういうことですか?

藤川:うーん、・・・・・ひとことでいうのは難しいですね。

そもそも、薩川さんが、この映画に参加なさった経緯は?

薩川:実は最初は総集編の監督をやってもらえないかという話があったんですよね。まだ正式に劇場版の企画が成立していない段階でですが。でも、それはお断りしたんですよ。「総監督が上にいるのに、監督はいやだな」というわがままな理由で(笑)。それに僕が監督すると、『エヴァンゲリオンの映画”でなくて、『エヴァンゲリオンについての映画”とか 『エヴァンゲリオンのフィルムを素材にした全然別の映画”になっちゃう可能性がある。そのあげく、結局、封切に間に合わないってことにでもなったら(笑)。しばらくして、「DEATH&REBIRTH」という形になった時に、改めて 「総集編の構成をやってもらえないか」 という話になって、引き受けることになったんです。

構成するにあたって、最初に、庵野監督から、総集編の設計理念みたいな話があったと思うんですが?

薩川:いや、そんな話はありませんでした(笑)。とにかく、「わかりやすくてつまらないもの」を作るよりも、「わからなくてもいいから刺激的なもの」にしてほしい。それで、どちらかといえばドキユメンタリータッチのものを、と。いちばん最初の打ち合わせでは、内容については、そんな話ぐらいで。あとは、スケジュールとか予算とか。そういった外枠の話ばかりだったんです。

それは意外な話ですね。じゃあ、 どんな手順で作業なさったんでしょうか。

薩川:初めに、どう組み立てるかという概念図を提出したんです。それで、庵野さんからは「これでやってくれ」という返事をもらい、ビデオやLDでTV版本編を嫌になるほど見て、「第零稿」を作っていったんです。それを叩き台にして、 「REBIRTH」編との絡みでシーンを足したり削ったり、音楽録りに立ち会ったりして、次に書いたものが、決定稿になりました。

初稿の次が決定稿とは、珍しいですよね。初稿の前に提出された、概念図というのはどういうものだったんですか?

藤川:簡単なフローチャートです。子供達が体育館に集まって「カノン」を弾くところから始まって、ミサトのエピソードから入り、シンジ、アスカ、レイとつなげて、最後に「REBIRTH」の始まる直前、カヲルのエピソードに集約する、と、

ああ、そのころからすでに演奏場面のアイデアがあったんですか、

藤川:最初に庵野さんから、「パッヘルベルの「カノン」をエンディングに流したい」といわれていたんです。「エヴァンゲリオン」とはずいぶん肌合いが違う曲だから、どうやって組み込もうかと考えて、新作部分でリンクさせることにしたんです。

なるほど、あのシーンのアイデアがあって「カノン」が使われたわけではなくて、逆なんですね。

藤川:そうです。

あの演奏場面というのは、あくまでイメージですよね? 実際の出来事ではなくて。

薩川:うーん、公開中の映画に注釈を加えるのはどうかと思いますので・・・・・・。ま、 どちらに受け取ってもらってもかまいません。

シーンをシャッフルしていくというのは、薩川さんのアイデアなんですか。

薩川:どうシャッフルするかは僕の考えですけれど、最初の打ち合わせで、なんとなくそうなるんじゃないか、というようなことになったんです。錯綜したイメージで。その時、「例えばこんな感じ」 と話に出たのも、ジャン=リュック・ゴダールやオーソン・ウェルズ、寺山修司、 NHKの佐々木昭一郎といった人たちの作品です。

わかりやすいものよりも、わからなくても刺激的なものをという話がありましたが。

藤川:今回『DEATH」編の方針について、ご批判の向きも多いのですが、実はこうした構成の方が最大公約数の観客をつかむ一番の方法なんじゃないかと僕は思っています。TVシリーズのストーリーや人物関係等をわかりやすくまとめたダイジェストだと誰からも憎まれないかわりに誰からも愛されませんしね。 “勘定合って、銭足らず”で、結局、「エヴァンゲリオン」という作品の本質から一番離れたモノになってしまったんじゃないかなと思います。

刺激的ということで、気をつけられたことはありますか。

藤川:レガート(滑らか)に行くものと、バンバンと前後が対立するようなものを効果的に組み合わせるようにしたということですね。LDの新作部分をまず見せようと考えて、ファーストシーンをセカンドインパクトの場面にしたんですよ。それで、次は拾弐話につなげられるな、じゃあ、次はベッドシーンだ・・・・・・というように。だから、その時の「気分」が違えば、別のつなぎ方になったんじゃないですかね。

じゃあ、自分の気持ちに添って並べられたんですね。いわゆる脚本家的な発想とは、どこか違いますね。

薩川:いや、そんなことはないでしょう。いわゆるサブテキストの構成はちゃんと組み立てましたし、ただ羅列しただけではありませんから。普段のシナリオの作業とそんなには違いませんでしたけどね。

――なるほど、「気分」とおっしゃったけれども、それだけではないんですね。

薩川:ええ。普通の脚本を書くときも、 セリフは感性によるものですけれど、それ以前にドラマを構成する作業がありますからね。

「REBIRTH」との2部構成ということで、気をつけられたことは?
薩川:今回の「DEATH&REBIRTH」のコンセプトはマーラーの交響曲第8番のようなものじゃないかと思っていたんです。「千人の交響曲」と呼ばれるこの曲も2部に分かれていて、第1部は「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」という賛美歌、第2部はゲーテの「ファウスト」終幕の場という構成になっています。もともとこの二つには直接の繁がりはありません。一つはラテン語、もう一つはドイツ語ですし。けれど、マーラーの8番の中で、この二つは互いに呼応し合い、複雑に絡み合い、音楽の大伽藍を構築しています。今回の映画もそれと同じように、「DEATH」で提示した数々のモチーフが再び「REBIRTH」に現れる、という感じに考えてました。 だから『REBIRTH」が未完に終わった今、「DEATH」の方も未完と言えるのかもしれません。

サラウンドを利用して、副音声からもセリフが流れている場面がありましたが、それは脚本の段階から?

薩川:ええ。脚本を上下に区切って、こちらは画面の進行、こちらは音の進行という形でやってました。脚本作業の段階では、画面の方ももっと、デジタル編集で、ダブらせてしまったり、ぼんやりと副音声の画面へ変わっていったりするようものをイメージしてましたが、時間的にも予算的にもそんな余裕はなかったようです。

脚本を拝見すると、例の「起動」、 「凌辱」といったクレジットまで指定されていますね。

藤川:もともとの脚本では、そういった言葉はセリフになっているんですよ。ゴダールの「勝手にしやがれ」の予告編というのが、堅い言葉を女がボソッ、ボンッと言うようなものだったので、僕はそれを戦闘シーンでやろうと思っていたんです。庵野さんは賛成してくれたんですけれど、摩砂雪さんが、「あ、俺ゴダールわかんねえし、あれは仏語でやるから美しいのであって日本語でやったらどうかナァ~…………………」とおっしゃって、できあがったのが、あのシーンなんです。

ああ、なるほど、そういった実際に画面になったときのアイデアや、編集のリズムといったトータルの部分で、摩砂雪さんの色合いが強いフィルムになっているという、最初の話につながるわけですね。

薩川:そうですね。しかし、制約が多い中でよくぞあれだけのものができたなと思います。流石、摩砂雪監督ですね。

『REBIRTH』への感想を。

薩川:ありません。早くエンドマークを打ったものが見たいです。

夏の制作には関わらないのですか。

薩川:ええ。もう関わることはないんじゃないでしょうか。今回の『DEATH』 編が僕にとっての『THE END OF EVANGELION』ですね。夏の映画は切符を買って、初日の行列に並びたいと思います。

『エヴァンゲリオン』を終えるにあたって、何かコメントは?

薩川:コメントはないです。あ、そうそう・・・・・・。実写の作品で脚本を担当した江戸川乱歩の『D坂の殺人事件』(監督・ 実相寺昭雄、主演・真田広之)が同じ時期に同じ東映の配給で公開される予定です。エヴァに喰われてしまわない事を祈ってます(笑)。

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『ガイナックス・インタビューズ』(庵野監督インタビュー該当部分)

https://www.kodansha.co.jp/comic/products/0000221804

今回とりあげた書籍の中ではインタビュー日時が最も最後の時系列。

【庵野監督インタビュー】

ナディアは子供番組だったので、子供が見ることを前提にして作っていました。子供に見せるものだからこそごまかずに極力キチンとやろうと考えていたんです。子供向けのものはナメて作っちゃいかんと思います。【60】

ナディアの場合は基本的な話の流れを放送局が既に設定していたので、それに乗ったうえで作りました。死って難しいんですよ、描くのが。その人の宗教観や世界観、死生観や哲学までが関わってきますから。でも放送局側のラインに死が盛り込んである以上、外せない。となれば「せめて自分にウソをつかずにやりたい」と考えていたと思います。【61】

子供向けだろうがオタク向けだろうが総じてナメた仕事はどうかと思いますね。割り切った仕事はできますが、お客をバカにするものはつくれないだろうとおもいます。【61】

評論家とかはあまり好きじゃないんですけど、ただそういう人たちが何か語ることによって「つくられる作品がもっと面白くなるのならいいのに」とは思います。

文化に関して語るにはこの国のレベルはあまりに低いですし。それは論じる対象も、論じる方法も。文化に関しては本当に幼稚な国だなと思いますよ。なるほどと思う評論にはごくまれにしか出会えませんね。【62】

(「アニメは世界に誇る代表的なコンテンツ産業と語られることが多いですが」と聞かれて)それは世界において日本がアニメを独占しているだけだと思います。

週刊ペースでアニメを、こんなに量産できる方法論と余裕を持っている国は日本だけですから。アメリカですらもう難しくなってると思います。ほかにライバルがいなければ、世界に誇れるのは必定ではないかと。世間や官がアニメをどれほど理解して真に評価しているかは甚だ疑問が残りますね。【62】

日本は精神的には豊かだとは思えない。それよりも民度が低いとか、味方が要地であるとか、トータルで子供っぽいですよね。この国は。それは当然僕も含めてですけど。【62】

東京の街の景観をチラッと見ても、この国の文化的なレベルはこれか、とわかりますね。最近の建築物には美意識なんてものはなく、ただ経済や物流の効率のみの単一目的で街を作ってます。この頃ようやく、景観や情緒を大事にしようという動きが世間に出てくるようになりましたけど、それは良いことだと思います。【62】

アニメも、一昔前の経済的なバブルに似た状況にあると、今感じますね。アニメバブルですかね。【63】

オタクの最大の弱点に画一化があると思います。多様化しない。アニメも多様化してないですよね。どんどん一律化している。これは滅びの道ですよね。そのうち滅びますよ。【64】

滅びるのならそれもいいかと思いますよ。滅びを止めたいエネルギーの方が大きければとまるだけだし、「そうじゃない、このままでいいや」っていうエネルギーの方が大きければ滅びていくんじゃないですか。

滅びるとしても全くのゼロにはならんと思うので、それでいいと思いますよ。残るべきものがわずかでも残っていれば。大きな流れに任せるのが自然でいいかと。【64】

僕がやってるのはあくまでも観客に対するサービスの延長でしかないんです。この仕事はサービス業ですから。【64】

60年代以降はカウンターカルチャーしかなかったと思うんですよ。なにかがあって、それに反発して、結局その反発したものに対するまた反発。この繰り返しでしかなかった。

今はその反発すべきものすらなくなっているので、創作行為はリサイクルとコピーコラージュみたいなものでしかなくなってしまった。今つくられているものはコピーペーストによるものだけですよね。これはもうしようがないと思っていますけど。

人ひとりが持っているポテンシャルがここまで低くなって、こんなに情報だけ増えた今ではコピーペーストぐらいしか出てこないんでしょうね。いつかはこうした状況も、今の日本の社会的な状況も含めて、変わっていくとは思うんですけどね。【65】

オタクはもう万国共通だと感じます。ヨーロッパでも韓国でも台湾でも香港でもアメリカでも、オタクは本当に変わらないですね。

これはすごいと思います。オタクに対して非難めいたことを言っているようですけど、否定しているわけじゃないんですよ。【65】

オタク以外の人からオタクを非難されると腹が立ちますね。「うるさいバカ」と思います。なにもわかってないくせにと(笑)【65】

基本的に自分の作品はあまり見直さないですね。つくっている間に嫌というほど見てますから。面白さを少しでも上げるために制作中は初号ギリギリまで何十回何百回と見直します。【66】

アニメーターというのはカメラで撮影しつつ、演技をしつつ、しかもそれを画にするという大変な仕事です。カメラマンと役者と画描きの3つの技術が要求されるわけですから。だからこそ面白いんですけどね。【67】

(「庵野さんは学生時代にマンガを描いたこともあるそうですが、ひとりで作品を作るのは結構辛いものでしょうか。」と聞かれて)ひとりでつくるのが別に辛いってことはないですけど・・・面白くないんですよ。

ひとりでつくったほうがストレスは絶対に少ないと思います。けどただひとりでつくってそれで面白いモノがあがるかっていうと、僕は無理ですね。

僕一人の持つイメージってたいしたことないんですよ。僕がひとりでアニメをつくっても面白いモノになるとは思えないんです。だから集団の方がいい。【68】

守るべきものは僕自身じゃないんですよ。守らなきゃならないのは作品であり、現場スタッフなんです。

それを外から防御するために監督である僕が最前線に立っているだけです。出来上がった作品に付いて僕が悪口を言われるのは良い。そういうときに矢面となる対象として監督がいるわけですから。しかしスタッフの悪口を外から言われるのは許せないですね。【68】

作品=スタッフです。作品はスタッフがいなければできないですから。最優先です。

僕は今まであまり潤沢な予算というものをもらったことがないんですよ。だからこれだけの仕事に対してこれだけのお金を出しますという経済的な形でスタッフに報いることが出来たことがないんです。いつもギャラ以上のことを要求しているし、してもらっています。

スタッフやキャストには本当に感謝しています。だからせめて面白いモノにしないと申し訳ない。やって、参加して良かったと思われる作品にしたいと思っています。【68】

集団作業はいろいろ大変ですが、なんといっても面白いです。だからまだ続けてるんだと思います。【69】

漫画は小学校の時から描いてはいたんですが大学の時にやめちゃいました。面白くないんですよ、自分のは。【69】

(日本では伝統的に、独裁的なイメージをもつ監督像が愛でられてきた気がしますが」と聞かれて)独裁者の方がキャラクターとして分かりやすいですしね。

それに独裁者っぽくしている方がスタッフも楽なんですよ。たぶん僕も現場に立っている時は独裁者っぽく見えると思います。その方がシステムが機能しやすいし。

でもそれは、スタッフもある程度監督という仕事を分かってくれているという暗黙の了解があってのことですから【69】

監督が独裁者になれるのは、監督だけが責任を取るからなんですよ。それが監督の唯一の仕事ですから。

監督がそれだけはやっちゃいかんと思うのは、出来上がった作品についてスタッフを非難することです。これはシナリオが悪いから失敗したとか、役者が悪いから失敗したとかですね。最低のことだと思います。

そのシナリオを採用したのは監督だし、役者をオーケーしたのは監督じゃないですか。その人の能力不足でしかないですよね。監督をやっている以上スタッフのせいにしないのは最低限の礼儀だと思います。【70】

名前だけでぜんぜん仕事をしない監督さんもいます。しかしアニメの現場はそれでも機能するんですよ。むしろそのほうが制作スケジュール的には助かることもあります。【70】

『DAICOMFILM版帰ってきたウルトラマン』では自分の至らなさから製作途中で監督を降ろされてしまって、その後の作業は全て赤井くんがやってくれました。完成までもっていってもらえたのは、すべて彼のおかげです。

完成したフィルムを東京の上映会で初めて観た時には大泣きしてしまいました。ホント、感謝しています。あと結果論ですけどあの作品では、編集と音は僕がやらない方が良かったと感じます。自分がやっていたらあれだけの作品にはなっていなかった。『72』

(「そういう話を聞くと、みんなでものをつくるのはいいものだなと憧れますね」と言われて)もちろんいい場面ばっかりではないので、作品1本やった後は「こいつとはもう二度と仕事は出来ん」という人もいます。トータルでは嫌な部分の方が多いですよね。

監督をやっているとよかった部分と嫌な部分の比率は、たいてい6対4くらいで嫌な部分の方が多くなってしまいますけど。でも、僕はいいものだと思いますよ。『72』

(「庵野さんの監督としての基本姿勢は、常に自分の思惑を超えるものをスタッフが出してくれることを期待しているわけでしょうか」と聞かれて)まあ、そうですね。自分が持っているものが最低限ですね。自分の思っていたものと全く方向性が違うものが出てきてもそれが面白ければオーケーなんです。

自分のイメージどおりにつくりたいっていう気持ちはあんまりないですよね。むしろ自分のイメージじゃない方がいいかと。今実写をやっているのはそこが大きいんです。【72】

自分の思いどおりにつくるんだったらアニメをやったほうが絶対に良いですね。

ただ僕はそのシステムでずっと長くやってきたので、今は思い通りにならないものの方が良いと感じるんですよ。「思惑と全然違う」という部分を「どうしよう」と考える家庭を含めて、面白いですね。【73】

実写作品で役者さんの制御はほとんどしていないですよ。演技指導って嫌いなんですよね。『ラブ&ポップ』では特にそうでした。言葉は悪いですけど放し飼いでしたね。【73】

『ラブ&ポップ』では120時間以上カメラを回しています。【74】

僕はどうもないものねだりというか、アニメをやっているときは生っぽいものに憧れて、実写をやっているとやっぱり生っぽいものを切り捨てようとしてしまいますよね。

僕の生理的なものだと思うのですが、必要以上に生っぽいものはいらないと考えてしまうんです。自分でも妙なんですけど。そういうところを特に感じれば現実の人間を定着させる気はない」という感想も出てくるのだろうと思います。(インタビュアーに「庵野さんの実写作品を観ると「この人は現実に息づいている人間を映像として定着させる気はないんだ!」と思ったと言われて)【74】

アニメにしても実写にしても僕から見れば現場が違うだけで、つくり方自体はそんなに違う感じはないんですよ。

基本的にどちらも同じで、映画をつくっていて自分が気をつけることといえば、客がどうやったら寝ないですむかということだけです。それだけですね。

お客さんが30分なら30分、2時間なら2時間の間に「椅子が痛いなあ」と、どうやったら思わないだろうかとか、どうやったら寝ないだろうかとか。フィルムを作りながら考えてるのはそこです。

緩急とかそういうものですね。人間がひとつのことをやり続けることが出来るのは45分が限度らしいんです。【74】

人間の集中力はそうは長くは続かない。だから始まって5分でこれぐらいの情報を提示して15分くらいでこんなもので、そろそろ飽きたかな、眠いかなというところで目の覚めるようなものを入れる。それは編集の段階でも考えますけど。そうした作品の大きな流れにいちばん気を遣うようにしています。【74】

(作品を作る時は)理屈っぽく作っているように見られがちですけど理屈ではやっていないんですよ。根拠になるものはほとんど雰囲気とか気分とかそうしたあいまいなものですね。自分の中で持っているそういった感じは大切にしようとしています。

セリフにしてもカットのつながりにしても、「なんかこれ違うな」という違和感を外していくんですよ。自分で見ていて「ここでこういうものが来てほしい」という感覚的なものですね。【75】

発想のとっかかりは、こういう画をやりたいとか、こういうシチュエーションを描いてみたいとか、そうしたヴィジュアルイメージであることが多いです。スタートはそんな他愛もないものですよ。

ただいちばん最初にやりたかったものって結果として、早々にどこかへ行ってしまうんです。「これがいちばんやりたかったのに」というところも(笑) シナリオとかの段階でどうしても入んなかったりして、なぜか消えてなくなってますね。【75】

結局、自分の好きなものってそんなに幅がないんで。結果として映っているものはたいてい似通ってきちゃいますよね。映画1本の中で8割9割はやっぱり自分の好きなものを入れていると思います。

自分の好みじゃないものが映っても外しちゃうんですよね。ただ残りの1割2割、今回これが新たに好きになりましたとか、スタッフが好きなものを入れるようにしています。【75】

ここだけ違いますというものがどこかにないと作っていて自分が面白くないんですよ。永遠に同じものを作ることが出来れば、それはそれでいいんですけど、どうもまだできないですね。

そのうちにできるようになるかもしれないですけど、今はそうはいかないですね。自分が飽きっぽいのもあるんでしょうね。あまり同じテイストで作りたくはないです。【75】

僕の場合、社会の状況まで視野に入れてものを考える(作品を作る)ことはないです。

社会の状況というよりも、自分が暮らしている環境ですね。自分の環境とは、自分の手の届くところ、自分の見えるところ、自分が実感を持って理解できるところまでだと思いますが。【76】

小説や実写映画と違ってアニメが海外に輸出されるのは、それがあまり日本っぽくないからじゃないですかね。髪の毛が黒ではなく、黄色とか青とカ赤の人がいっぱいいますし(笑)【76】

行政も民間もあまり実写映画の撮影に協力してくれないという問題があります。なかなか撮らせてくれないんですよ。

「映画は文化だ」と口では言っていますけど、この国の本心では、映画が文化だなんて思ってないんだろうなと感じます。映画に対する協力体制とかまだまだできてないですね。

もちろん撮影する側にも問題があるとも思いますし、全てが非協力というわけでもありません。現に『式日』の撮影時は地元の方々のおかげで本当に助かりました。【77】

しかし個人では協力してくれても、企業なり行政となると経済効果や宣伝効果が優先されたり、「なにかあったらマズイ」ということで、どうしても事なかれ主義になっちゃうんですよね。

残念ながらリスクを負ってまで映画を作りたいと思う方は少ないですね。こういうところは中国とカ韓国とかアメリカとかには、まったくかなわないです。【77】

『エヴァ』のときにはよく「でもアニメでしょう、アニメだから観ない」と散々言われました。それはそういうもんだと思うんです。

エヴァの後実写を何本かやったので、そっちを好きな人からは「アニメなんかやってないでずっと実写を撮ってください」と言われます。【78】

今、この国は心が貧しいと思います。絵画を見せるにしてもそうですよね。良い絵を広く誰にでも公開しようとはせず、ガラスのケースに入れてロープの向こうから見せるでしょう。

絵の具の持っている本当の素晴らしさ、デジタルにはない絵の具の立体が持つ陰影は、きちんとした照明の中である程度近寄って見ないと分からない。日本の環境では絵画の持つ素晴らしさはなかなか伝わりにくいと思います。

ヨーロッパとかはただで見せてるそうですよ。ガラスケースにも入れず、誰でもイーゼルを模写もできる。子供のころからすぐれた作品をじかに目の前で見てしかもタダで模写もできる環境で育てば、そりゃもう、ものを見る目がぜんぜん違ってきますよ。少なくとも絵を描く力は全然違うでしょう。

絵を描く、という行為ひとつとってもこの国は相当遅れていると思います。【78】

芸術や文化に対する認識がまったく置き去りにされているじゃないですか。建物でもちょっと耐震性に問題があると言われれば、すぐ取り壊して新しくしてしまいます。

昭和のものを残してほしいと思っても、「まだ築100年たっていないから価値がない」といって残そうとしない。それはおかしいでしょう。なぜその建物の価値を今判断することが出来ないんだろうと思います。そういうところでおかしいですよね、この国は。

ちょっと前の本当にいい家や街並みが、どんどん取り壊されていますよね。経済効果や道路を物流目的で整備するといった単一価値に走った結果だと思います。【78】

東京都の税収はもっと小金井の「江戸東京たてもの園」に使うべきだと思いますよ。少なくとも僕が都に払っている税金は全額そこにまわしてほしい(笑)【79】

新しい漫画はほとんど読まないんです。その時間があったら昔のものを読み返しますよね。【80】

本宮ひろ志先生が好きなんです。直球なんですよね。あの直球なところがものすごく好きです。【80】

ガイナックスにはアマチュアでつくったシステムというかノリみたいなものは今でも継続して生きていると思います。僕個人としては大学のときに自主製作を体験しておいて良かったと思っていますよ。

あのときに本当に集団でなにかをつくるということの、良いことも悪いことも身に沁みましたから。そしてやっぱり面白かったんですよね。あの体験があったから、今の自分がいると思います。【80】

ガイナックスにいて良かったと思います。ガイナックスでやっていたから、自分に合っていたし面白かったんだろうなと思います。

ガイナックスには「決まった型がない」とう感じがします。社長と言っても年はそんなに変わらないし、学生が集まってアニメをつくろうと結成したのが出発点という会社ですから、なんというか大人の会社じゃないんですよ。子供の発想のままずっと来ている会社なので、そこがすごく好きです。【80】

ただエヴァをつくっているときには「会社がつぶれてもいいや」と思っていました。

僕が守るべきものはあくまでも作品なので、会社の維持よりはそっちを探ってしまうんですよ。作品至上主義と会社経営が両立できるほど、僕は大人じゃないですから。(後でカラー作ってそれやるけどね…)まあ運よく持ちこたえてくれてよかったです(笑)【80】

(「儲かるからエヴァ2を作れと言った要請も出てくると思うのですが」と聞かれ)そういうのが出てこない会社なんですよ。会社の発想ではなくて個人の発想の延長が集まっているという感覚ですね。【81】

もし今エヴァを作るとすればもう少し親切に作るかもしれないですね。エヴァの当時の状況では突き放したほうがいいと考えていましたが今では受け入れられないでしょうね。そんな余裕のある状況じゃなくなってきてると思います。

僕は流行りの歌を聞かないんでわからないんですけど歌詞で「友達は大切だ」とかわざわざ口にしなくてもいいようなことを口にして それがヒットして受けている。

『友達が大切』ってそれは当たり前のことじゃないですか(笑) 歌詞にする必要なんかないんですよ。

そういうのを聞くと「あーもういよいよダメになってきたか」と感じます。エヴァ やってた頃 90年代ならまだもうちょっと表現に余裕があったと思うんですけどそれがいよいよなくなってきた感じがします 。

エヴァでは赤毛のアン で語られたような人が想像する余地を、楽しさを提示したかったんです。

あの当時は何でもかんでも攻略本やマニュアル本 が発売されていてデート 1つ するにもマニュアルがないとできないしゲーム 1つ クリアするのにも攻略本がないとできないという風潮でした。まるで人間の作ったものには全て回答、答えがあるというようにですね。

でもそれはどうかと。現実の世界では答え は仮説も含めて多様化しているわけじゃないですか。その人にとっての答えがあるというだけでこれは設問があれば必ず答えが一つ用意されているという日本の今の教育も良くないと思います。

例えば現国の問題なんかもそうですよね。「作者がどう考えているか40字以内で書け」なんていう設問が出る。僕は作者じゃないのでそういうのは分かりません。それに作品全体じゃなくて その数秒だけを抜粋されたものを読んでも作者がどういう気持ちで書いたかなんて分かりません。これは 答えとは限りません」というのが本来の回答 だと思いますけどそれを書いたら日本だとバツになりますよね【82】

 日本の教育は基本的にミスをしない人間が優秀という減算式のテストですね。まずそもそも100点満点という模範があってミスをしなかった人が100点を取る。しかしこれが別の発想の教育 ならば100点の人もいればそれを超えて200点の人もありえるわけです。しかし日本では200点の人は評価されないんですよ。【83】

 今はそういう風潮の中で「与えられたもの全てに答えがある」という感覚はいかがなものかと考えていました。思いついた人の分だけ答えがあるようなものにしたかったんですよ。

「答えはこちらが用意するものではなく皆さんの中にあるもの全てがOK」と。

今もそうですけど その頃は どんどん 想像力というものが社会から欠落していったと感じています。自分で考えない方が圧倒的に楽ですから。しかし想像する快楽っていうものも誰にでもあるはずだと思うんですよ。だから 作品の中に 想像する余地を残したんです。ブラックボックスをわざとあっちこっちに作っておいてしかもそのブラックボックス自体も組み合わせによって色々な解釈ができるようにしておく。「この言葉も当てはまるけど これも当てはまるじゃん」という答えがいくつもあるクロスワードみたいな楽しさですね。あからさまに矛盾する部分も入れておきました【83】

かと言って僕もゲームをやるときは 攻略本がないとやりませんけど(笑) (えぇ…)【83】

 今はもうゲームは全然やってないですけど以前「とにかくドラクエをやらなきゃだめだ」と友人が言うので借りてやったんですよ。そうしたらさっぱりわからなくてとにかく攻略本を見ながらプレイしました。(笑)

ゲーム中に無駄なことをするのが嫌いなんです。そこでストレスがたまるのが嫌でしたね。攻略本に載ってるラスボスを倒すには 経験値がいくつ必要というのをクリアして、しかもその2倍ぐらいまで行ってないとラスボスの前に行かなかったです。で、何本かやると「なるほどこういうものが ロールプレイングなんだ」ってある程度 分かったからもうやらなくなりました【83】

 ゲームをやる人の気持ちが少し分かりました。あと自分はこういうものはやらないんだっていうことが分かりました 。(笑 )

ちょっとゲームを好きになってみようという気持ちはあったんですけど自分の中であまり好きになれなかったんです。

そんな自分でもハマったゲームはスーパーロボット大戦シリーズですね。でもあれはゲームが好きというよりも ゲーム制作者の気持ちに対する共感とか登場するロボットそのもの、オリジナル作品への思い入れとかそういう部分で好きでしたから。

あとは麻雀ゲームくらいですね。ちょっとした時間つぶしにやってました。それももう全然やってないですけど 【84】

(「スーパーロボット大戦にエヴァンゲリオンを出すんだとおっしゃっていたそうですね。実現しましたが」と言われて)切望していたのであれは嬉しかったです。最近は仲間に入れてもらえなくて寂しいです。(悲)(確かこのちょっと前にMXが出てたから別にそんなことはない)【84】

 エヴァのテレビシリーズではスケジュール的にも精神的にもどんどん 余裕がなくなっていきました。そのうちにトリップしているというか集団でイッちゃってるような感じになりましたね。

ああいう体験にはなかなかお目にかかれないです。ああいうギリギリで切羽詰まっている状態はむしろ楽しかったですね。ものすごくハイになっていました。ずっと脳内麻薬が延々と出っぱなしになってたんじゃないでしょうかね。何ヶ月も【84】

 今 リニューアル 作業のために 5~6年ぶりに エヴァを見直しているんです。話や内容は自分でも結構忘れてたんですけど普通に見て「これは面白いな」と感じますね。辛いところもありますが やっぱり自分はこういう 巨大ロボットものが好きなんだなというのも感じます。

いや、面白いですねエヴァンゲリオン。「こりゃ 人気が出るわ」という気がします。それに自分でも変なことしてるなと思いますね。(笑)【84】

  例えば アニメのキャラクターでアイデンティティを確実に表現できる部分は キャラクターの持っている髪の形と色それと声でしかないんですよ。

第22話でアスカの内面を映像化しているんですけど現場にいた声優さん全員に アスカの声を演じてもらった。そしてその違う声のアスカを本来の宮村優子の声が否定しているという場面があるんです。やはりそういうのは自分でもおかしいと思いますね。

傍から見ると楽屋落ちにしか見えないと思いますけど当時は そういったマイナーなことまでやってました。自分のアニメの表現に対する疑問がかなり高まっていたんだと思います。

セルアニメで人間の持つ生っぽさを表現できるのは結局 声というか、音だけかと【85】

(カレカノを拝見すると庵野さんの声のこだわりが理解できる気がします。あたかも音を聞くために映像を作っているのだという印象すら受けます」と聞かれて)でもそれがテレビアニメの場合は当然なんですよ。音だけ聞いてちゃんと内容が伝わるように作った上で プラスアルファとして絵がつくという発想で制作しています。

もちろんアニメだし画がいいに越したことはないんですけど。しかし実際には パッとキャラクターを見てこの人が泣いているのか笑っているのかさっぱりわからないという画が上がってきたりすることが現場ではあるわけです。そういう時にセリフで「君どうして悲しいの」と入れると「そうか、この人は悲しいんだ」とお客さんに情報が伝わります。セルの絵だけで全てを表現することはもちろん可能ですがよほどの技術を持ったアニメーターが来てくれているなどの条件をクリアしない限りありえないですね。

特にテレビシリーズでは基本的に画に頼れないのが現状です。テレビアニメの表現はどうしても記号論にならざるを得ないので微妙な芝居は セリフとそれを演ずる声優さんに頼るしかないんですよ。絵だけでそのキャラクターのわずかな感情の動きを表現するのは難しいですね。それまでの物語の積み重ね、音の表現などで総合的にやっていくのが現実的ですね。

僕は運良く スタッフに恵まれているので音もバランスで考えられる状況で良かったです。映像の場合でも音も同じくらい重要ですから【86】

(「庵野さんは作品を評価するうえで数字をどのように考えているのでしょうか」と聞かれて) 人の心を動かした作品って初回 オンエアで数字の悪かったものが後々になって人気が出た例がほとんどですから。宇宙戦艦ヤマトも機動戦士ガンダムも放映当時の数字は散々でした。

エヴァも数字だけなら放映当時は 成功とは言えないです。失敗とも言えないけど成功とも言えない。そうした数字です。

また平均視聴率というのが 曲者で正月に放送した回が極端に低かったためにその1回のせいで全体の平均視聴率がガタッと落ちているんです。お正月なんかにアニメを放送するからだよと思うんですけど(笑)あれがなければそんなに悪い数字はないはずですか【86】

でもそのリサーチ至上主義 もどうかなと。もちろん数字は高いに越したことはないですけどね。市場の指示というものは数字でしか目に見えないし経済的なものを出さないと世間では評価されませんからね。正直ないよりはあった方がいいですね。

数値が高いとそれだけ作る環境が良くなるし。次に作品を作れるかどうかにも 直結しますし。やっぱり当てないと制作予算も上がらないですからね【87】

 エヴァをやっていた時のテーマのようなものに「作品にプライドを持つ」っていうのがあったんです。それだけは頑張ろうと褒めるにしてもけなすにしても、ですね。そこでエヴァという言葉を口に出した人が世間で恥ずかしい思いをしない作品にしたいという想いですね。

例えば 職場で「昨日のエヴァンゲリオンつまんなかったよね」という話をしていて知らない人に「何それ」と聞かれる。それで「今こういうアニメがある」と説明する。それで教えられた人が「そんなアニメがあるのならとちょっと見てみようかな」となった時に「なんだあんなものは」と思われないような作品にしたかったんです。

気に入るか気に入らないかは別としてやはり総じてアニメは基本的には子供っぽいというか 稚拙なものではあるんです。精神的に大人になっている人がアニメを見る必要を感じないと思いますから。

しかしと言いながらも世間に対してせめて一抹のプライドを持ちたいなと。「2万人のアニメファンはこれで喜んでくれればいい」だけではなくベクトルを少しでも外に向けたいということだけなんですけど。

しかし結果としては最後はアニメファンに受ける方向に行ってしまったので 結局自分もオタクだなと思いますが(笑)

まあ僕にしてもプライドを持ちたいというのは願望のようなものでしかないので本当にそれで世間に通用しているのかプライドを持てているのかと言うとちょっと自信はないですね【87】

 (「庵野さん自身がヤマトやガンダムにエヴァンゲリオンは匹敵すると考えているのでしょうか?」と聞かれて)いや全然【87】

(「ではガンダムを100とするとエヴァンゲリオンはどれくらいのものなのでしょう?」と聞かれて)いやそれは 数値化するもんじゃないですよ。

ヤマトやガンダムとかに対する思い入れというか超えたいという気持ちは僕の中で今沈静化している気がします。一種「諦め」みたいなものかと。ヤマト、ガンダムにはこのままでは勝てないという思いですね。

あれに勝てるだけの何かを手に入れてからではないとあの時代の作品や人たちには勝てないと思うんです。これに関しては育った時代の状況という要素もあるのでそれはしょうがないことかもしれないですけど 【88】

あくまでも 僕自身の認識ですけど自分がかつてヤマトやガンダムなどを見た時に受けたのと同じような衝撃を今から感じるかと言うとまだ足りない気がします。今現在ということで比べれば もしかしたら 富野 さんより僕の方が面白い作品を作れるかもしれない。しかしガンダム、イデオンの時の富野さんにはまだまだ叶わないと思うんですよ【 88】

 僕が初めて見た ロボットアニメは 鉄人28号 なんですけどそれが4歳の頃でした。それ以来子供の時から延々とロボットアニメを見続けてきた15年間という時間を経て 19歳の時に受けた衝撃がガンダムだったんです。

「あのロボットアニメ がこんなものにまでなっている」というこの衝撃は自分では超えられないんじゃないか。ファーストガンダム第1話の衝撃はそれほどのものでした。 G アーマーが出てこなきゃいけないというようなそれまでのロボットアニメの枷がまだまとわりついていながらもあの作品は「ここから新しいものをやるんだ」というエネルギーがすごかったんですよ。それまでのロボットアニメが蓄積してきたテーゼ に対するアンチテーゼやカウンターがガンダムにはものすごくあった。そこに感動したんです。

それに比べれば エヴァはまだまだ足りないですね。インパクトの度合いが違う気がします【88】

 ヤマトもそうです。本放送は14歳の時でした。あの頃は自分も中学2年になっていて親や友達から「まだアニメ見てるの」「いい歳して漫画なんか見てないでいい加減卒業しなさい」と言われていました。まあそれもそうだなと思います。しかし中2の自分が友達に話して恥ずかしくない番組がヤマトだったんです。

最初は誰も見てなかったのに「猿の軍団見てないでこっち見ようよ」とか「ハイジ見てないでこっち見ようよ」と友達とか別のクラスの人にまで布教活動しましたね。ほとんど耳を傾けてくれる人はいなかったんですけどね。(笑)

SFや戦記物が好きだったんですけどそういう自分の好きな部分も満たしてくれたアニメがあれだったんです。中2の自分が見て恥ずかしくない「やっぱりアニメ見てていいんだ」と確信させてくれる番組でした。

ヤマトを中2の時に見ていなかったらその後もうアニメは見ていなかったでしょうね。今で言えば 「ハマる」って言うやつです。ヤマトの音声を録音するために親に英語の勉強したいと嘘をついてテレビチューナー付きのカセットデッキを買ってもらいましたでも小遣いがなくてテープは120分のが数本しかなかったんですよ。新しい回を録音する前に覚えてしまわなきゃいけないんですよ。毎日カセットを延々と聞いてセリフや音を覚えていました。あの頃はヤマトのセリフをほとんど空で言えました。【89】

 そういう体験の記憶が自分の中に入り込んじゃっているんですよ。ヤマトやガンダムと違う面白さはエヴァにもあるとは思うんですけど 自分自身の認識としてはかつて14歳の時にヤマトを見た感動を超えるものは自分には作れないんじゃないか、19歳の時に子供の頃からずっとロボットアニメを見続けてきた自分がガンダムの第1話を見て受けた衝撃を自分では超えられないんじゃないか。自分の中にある記憶に勝つことができるかというとこれがすごく難しい気がするんです。超えたいという願望はありますけど 一方では自分ではできないという諦めもあります【90】

少なくとも今作るものが エヴァンゲリオンみたいなものにはならないと思います。テンパった切羽詰まったものにはならないで済むかもしれない。もうちょっと幸せなものがいいなと思います 【90】

( 漫画家の安野モヨコさんとご結婚なさいましたが作家同士で結婚することで相互作用なものが起こりませんでしたか?」と聞かれて)0ではないと思うんですけどやはり全然違う仕事ですから直接はないですね。

うちの奥さんは仕事を一人でやってしまうタイプなんでネームの相談を受けたりとかはないんですよ。だから意見を求められた時にだけ何か答えるくらいですね。仕事上は そんな感じです。ただ思想とか思考とかそういった 根本的な話とかはよくしてるのでそこらの影響は互いに出てると思います。 夫婦でプラスになっていけばいいなと思いますね。余裕のようなものは出てきたと思いますね。自分が生きている上で 常々 欲しいと思っているものは余裕なんですよ。それは増えたかと思います【90】

 (「野望は燃え盛っていますか」と聞かれて) 野望は欲しいですよね。今の日本にも野望が足りない気がします。僕も野望が欲しいですけどね。【91】

 (「富野監督は60歳を超えてなおルーカスやスピルバーグに勝つんだと野望を語っています」と言われて)野望とか野心があまりないんですよね。

面白い作品がこの先もいっぱい作れればいいやとかそのくらいですかね。そのためには予算とか時間とかがもっとたくさん欲しいですね。まあ単純に自分はルーカスやスピルバーグの映画を面白いと感じられないので憧れないんだと思いますけど【91】

(「なんだか日本の創作には何か良くない流れがある。しかしその一方で何か新しいものが生まれるんじゃないかという感覚も感じます」と言われて)世界というものは人のイメージが作るものだとなんとなく思います。だから変われという願いが満ちてくれば変わるんじゃないかとは感じます。でもそれも日本という狭い地域での感覚でしかないでしょうけど【91】

アニメ界の現状を変える作品を作る気はありませんがこの現状は 打破したいですね。それは常にわずかでも。 2003年3月【92】

 

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庵野秀明のフタリシバイ

https://www.tokuma.jp/book/b503856.html

演劇にハマってた頃の庵野さんの(主に)演劇関係者との対談集。対談者ごとに異なるページデザイン、構成がされておりユニーク。

【鴻上尚史氏との対談】対談日:1997年7月19日(EOE公開初日。ラブ&ポップ準備中)

鴻上氏の『ジュリエット・ゲーム』の「いいセックスしてる?」というのと「恋愛のはじめには理由はないが、終わりには理由がある」っていうのが好きなんですよ。【19】

(「庵野さんはダイアローグが好きなんですか」と聞かれて)好きです。会話劇が好き。【19】

エヴァのデザインは最初に「鬼にしてくれ」と言った。【20】

エヴァを作る時に何か壊してもう一度作り直すのはどうかなーと思ってた。とりあえず壊そうと。【23】

エヴァは本来のテレビの枠を超えちゃってる。1話からそう。その段階から「テレビでございます。この程度でございます」ってところから壊してる。【23】

エヴァの予算はテレビシリーズ並み。期間は多少あった。【23】

ゲームが出て、攻略本さえ手に入れれば間違いなくクリアできる。マニュアルさえあればなんとかなるというのが今の子供にはある。だから創り事っていうのは全て答えが存在する、それはいずれ公表されるものという認識がある。そういうのが当たり前になっているのでエヴァにしてもいずれそういうのが出るのだろうと思っているのだろう。でも僕は出したくないですね。【25】

出したらそれで終わりですからね。つまんなくなります。真実は人の頭の数ほどあると思いますから。僕にとっての真実とお客さんの真実はできるだけズレは少ない方がいいんですけど、お客さんのことをワザワザこっちに捻じ曲げてでも、こっちが真実なんだからこっち観てよというのはどうかなぁと思います。【25】

鴻上「ラストの終わり方に庵野さんのガッツを見た思いがしましたね」 庵野「そうですか。」 鴻上「あのワンエピソードがないと、ある感動的なオデッセイ、叙事詩で終わるじゃないですか」 庵野「ええ」 鴻上「そこで現実、ある種の生々しさがやっぱり残るんだっていうか。真実としてこの生々しさがあるんだというのはあるでしょ」 庵野「そうですね」 鴻上「アレは偉い。社会現象になった作品であの一つを付け足せるガッツってすごいと思います」 庵野「ありがとうございます」(EOEのラストのことらしい)【25】

14話の綾波のモノローグの話がここでも出ている。(頭のおかしい人が書いたポエムの本の話)【26】

鴻上「子供たちは劇場版で自分たちが映っているのを見て驚くでしょうね」 庵野「そうかもしれないですね」

(「声優さんのプライベートな恋愛体験などをかなり深く掘り下げ聞いてそれをキャラクターに投影していたという話を聞いたのですが?」という質問に対して) うーん、何かなぁ。キャラクターを掘り下げるのに当の本人のイメージを持ってくるのが一番ラクなんですよ。アニメって絵ですよね、でも声は生なんですよ。僕はセルアニメの中で唯一生に接する部分は、声だなと思ってるんです。だから声の芝居はこだわってやってたんですよ。【30】

でもこの間ある日突然ぱっと気が付いたのは、芝居の付け方というか要求の仕方って言うのが自分のイメージしているのに一番近いニュアンスっていうかイントネーションに近い言い回しをしてくれるように追い求めてる気がして、それってなんかこう・・・人形みたいな感じがしたんです。何か、役者に対する芝居のリアリティって何なんだろうって。求めてるものが生じゃなく作り物みたいな感じがしちゃったんですよね。【31】

芝居やってみたいんですよ【32】

昔から生の会話が好きなんですよ。芝居いいですよね。僕の一番端っこにある。すごくいいんですよ。一番遠くにあるんですよ。【33】

あとは芝居を作るシステム、あれがうらやましい。アニメは複合人格。何人ものアニメーターさんが一つのキャラを描いて、それを統一してるのは声優さんの声だけ。あとは髪の毛の色とか。記号論なんです。話によって間が違っちゃうんです。そのシステムを何とかしたいっていうのがあるんですよね。声のね、生の部分の芝居つけるのって、長くて4時間なんですよ。4時間しかもらえない。映画の時はその倍の8時間。そんなんで芝居ができるかなんですけど。でも3日、4日あればよくなるのかといえばそういうわけでもない【33】

鴻上「声優さんでこの人は早口だからちょっと時間が短いようにしとこうって考えるんですか」 庵野「僕はそうです。第1話だとわかんないけど、ある程度つきあえばこの人早口だから巻きにしておこうとか僕はやってますけど。」【34】

先日第26話で3シーン、シンジとアスカ2人の芝居のヌキ取りをとるのに7時間以上かけさせてもらいました。初めて満足したアフレコでしたね。【35】

【野田秀樹氏との対談】対談日:1998年2月20日(ラブ&ポップ公開中及びカレカノ準備中)

映画館の空気ってあんまり信用置いてないんです。今の若い人がお金払って映画観に行くってことはもうすぐなくなってきてますよ。【52】

エヴァの映画の時は精神的に辛かった。(ラブ&ポップよりも)【67】

声優の声は「生」だと信じていたのだが、そこにあるのは技術だと気づいた。そこにあるのは記号だと。人の声をした記号。そう思った瞬間にダメなんです。(鴻上氏との対談でも言っていた)【67】

カレカノでは一人でも多く声優さんを使うまいと思ってるんです(笑)【68】

カレカノでは自分で音響をやれることになった。TVシリーズでも無茶と言えるセミプレスコシステムを導入したりしてた。【74】

【幾原邦彦氏との対談】対談日:1998年7月31日(カレカノ準備中)

カットを切り返して、止め絵のリズムで観せるのってもう飽きた。エヴァでやり尽くしたね。【76】

最初『バーチャファイター』を見た時、これにアニメは勝たないといけないのかって、ショックだった。その時に「だったら絵以外のところでレベルを上げていかねばいかんな」って。ちょうどエヴァやる前かな、思ったんだよね。【78】

CGの影嫌い。やっぱりパキっとしてないと。ワカメ影も板野さんとかセンスのいい一部の人が使って許されるもので他の人が使うとワカメにしか見えない。王立の作画をやった時はアレに対するカウンターだった。【80】

コミケでメジャーになるかならないかっていうのはエロティックなものになるかならないかっていうこと。やっぱりいつの時代も性的産業が強い。鶴巻が言ってたんだけど、ひたすら等価値なんだよ。広末涼子も綾波レイも。話すことが出来ないという点で、自分の中での距離が同じなの。【81】

幾ちゃん(幾原さん)は学生時代に演劇を割と見る人だった。自部が演劇に興味を持ったのは彼の勧めもあります。彼の演出したセーラームーンや金魚注意報は面白い。まだウテナは1話しか見てない。すまん。エヴァ始めてからほとんどアニメ見れてない。【87】

【KERA氏との対談】対談日:1999年4月11日(カレカノ放映終了直後及び実写新作企画中)

(「筋肉少女帯の三柴氏はウルトラセブンがキングジョーに負けそうになるのを見て興奮して初めてオナニーをした」という話の後に)ウルトラマンってそういうのありますよね。僕はやられてるシチュエーションが好きでしたね。レイプみたいな。【93】

『ゲバゲバ90分』を子供の時に見てた。インパクトを受けた。『94』

『奥様は魔女』でスゴイと思ったのはテレビから笑いが聞こえてくるところ。あれはうまいですね。やっぱり舞台を意識してるんでしょうね。【95】

『モンティーパイソン』はギャグもいいし、割と好き。でも僕は字幕スーパー版じゃなくてやっぱり日本語吹き替え版。【95】

演劇を見たきっかけは声優さんのお呼ばれ。大学の時に舞台やってる友達はいたが前衛的で全然わけがわからなかった。俺はこういう世界に入っていけないっていう感じで。数年前に声優さんのつきあいで観に行ったらなんかなぁ、面白かったんですよ。【97】

エヴァのアフレコ現場はすごく緊張感があってよかった。他の現場と全然違った。女性陣が他所だとジーパンだとかTシャツなのにエヴァだと着飾って来る。女の闘いですよね。なかなかイイ現場でしたね。【100】

新谷さん(カレカノ・FLCLでおなじみ)に会った時に「なんで芝居やってるんですか?」って聞いたら「滅び行く美学があるから」って言ってて気に入って新谷さん入れようって。【101】

何も言わないっていうのは2種類ですよね。役者を信用してるか、信用してないか。【103】

自分は作品に寄りけり。これは放し飼いだって思ったら放し飼いだし実写だと注文しない。芝居は役者に任せる。その方がいいものになる確率が高いですから。【103】

ギリギリまでよりよいイメージを模索した。だから意見を言ってくれ、このままでは良くないんじゃないかっていう不安が毎回あります。【103】

いわゆる独裁者にはなりたくない。最終的には決定権は僕が握ってるっていうのがいいんですよ。それが監督というか責任者ですから。うまくできたらスタッフやキャストのおかげ。失敗してたらそれは自分の責任なんですよね。【104】

基本的には自分も含めて作品の奴隷なんですね。作品にとっていいものであれば、どんなスタッフの意見でもよければ取り入れる。だから役者の分際でっていうのはないです。新谷さんみたいに噛みついてくれる人は好きですね。【104】

エヴァまでは1試合完全燃焼でやっていた。(今もでは?)でもそれやってるともう続かなくなっちゃいますね。【106】

芝居もAVも日本映画も現場の人と話をするとどこもかしこも限界みたいなことを耳にする。どこも閉塞感というか行き詰ってる雰囲気がある。アニメもそうだし【108】

何かこうトータルにできないかなぁと思う。統一場理論みたいなもの。これらを一つにする方法はないのかなぁと。垣根というかパーティションをとっぱらって、もうちょっと人の出入りとか自由に気楽に激しくなるようにですね。お互いのカテゴリーに関係なく別々のフィールドがぶつかると面白くなるように思えるんですけど。いわゆるコラボレーションというやつですかね。【108】

風呂敷は広げるだけ広げてですね、キレイに畳むだけが方法じゃないと思ったんですね。もっといろいろあっていいんじゃないかと。世のなかはエヴァだけじゃないし。【111】

【松尾スズキ氏との対談】対談日1999年5月18日(式日準備中)

※この対談だけ左から右へページを読むようになっているため後半の方がページ数が若くなっている。

昔専門学校で講師みたいなことをやったことがある。【154】

インタビュー記事が世に出る時にはネタが古かったりその時から思ってる事も変わってたりする。GaZOのVol2もそうだった。1年前のインタビューが載ってて「今はもうそんな思いをもってないよ」っていう感じだった。【151】

エヴァの時はパソコン通信が伸びてる頃で最初のうちは読んでたのだがそのうち読む暇もなくなって。参考意見になるありがたいものもあるんですけど大抵はホントに便所の落書き。だから見るのが億劫になって最近は見なくなった。リアルタイムで感想が聞けて、それを次に反映できるという夢があったんですけど、まあ見事に砕けましたね。【148】

最近疲れてる。【147】

『ガメラ3』をやったスタッフが終わってやっぱりへこたれてるって言ってた。僕自身も最近なんか疲れてるんです。自分でも休まないとちょっと危ないなっていう感じがしますね。自分で蒔いた種なんだけど、きつ過ぎる。【146】

組織を維持するための仕事をするんだったら、その組織はもう解散した方がいいんじゃないかな。【144】

ガイナックスでもう番を張るのに疲れた。【143】

最近疲れてるのに心惹かれてます。なんかみんな疲れてるんだなあっていうのを見るの、何か心が休まる。【142】

この間『人狼』というアニメを見たんですけど疲れ切ってるアニメで良かったんですよね。【141】

客って終局を観たがりますよね。【141】

今ジブリでいろいろやってるから巷では『山田くん』を手伝ってると噂されている。(実際は式日)【140】

『ミス・サイゴン』を観た時にはスゲエ!と思いました。【139】

清川元夢さんのために「舞台をやる」と5年前に約束して、その締め切りが6月いっぱいなんですよ【139】

清川さんは父と同い年。30分ぐらいの舞台を。【139】

オーディションは最初は面白いんだけどだんだん似たような人しか来なくなって途中で飽きちゃう。【138】

ジェームズ・キャメロンはどうやったら元が取れるか、リスクを極力背負わないようにということを確率論でやってるのが小憎たらしい(笑)【137】

松尾氏「鶴巻さんのアニメに僕ホントに出るのかなぁ」 庵野「出ると思いますよ。キャラクターで1人松尾さんをモデルに作ってましたから」【136】

『ターミネーター』は1ぐらいかな。キャメロンって基本的に好きになれないんで。観るたびに何かこうダメなんです。同類な感じがして…。【136】

芸風を変えたい。疲れてる。ちょっと何か広げたいって言う感じ。【132】

プライベートライアンはまだ見てない。(後に観て音響等に衝撃を受けたと言っていた)【128】

子供の頃61式戦車が展示でデパートに来て乗っけてもらってすごいかっこよかった。やっぱり戦車はいいなあと思う。【127】

死の瞬間って至福があるかもしれないですよね。これまでにない快楽と共に死んでいけるんじゃないかと。セックスしながら首絞めるのってなんかこういいらしいじゃないですか。【125】

戦車が好きなのは男性のシンボルと同じで…。戦艦もそうだけどでかい大砲が付いてるところ。そこにこだわりがあるんです。【125】

男が男であることを女に提示できるものって戦争しかないかもね。戦争映画を女の人よりは男の人が好むのは戦争は男の仕事だからでしょう。そうしないと男はどんどんメス化していくから。【124】

自分は女に振り回されたいタイプ。理想はヒモ。【122】

金を使うものは本とDVD、LD、CD。それ以外に使うこともない。欲しい時にすぐ手に入れられるお金があればいいだけです。今一番お金使ってるのはタクシー代ですよ。物欲ないですから。【121】

(「他になりたかったものは?」と聞かれて)バスの運転手。電車の運転手。

(「タクシーの運転手じゃない?」)タクシーじゃない。車は興味ないです。

(でっかいのがいい?」)でっかいやつ。

(パイロットは?)飛行機はそんなに興味ない。船と電車。

船と電車はやっぱり子供の頃側でよく見てたからでしょうね。あとは戦車。【119】

もともと男ってそんなに必要ないんですよね。子種と外で戦うくらいしかすることない。平和と呼ばれる状況だと女性に甘えるだけなんですよね。でもそれが本来の姿なのかも。そのうち子育ても男の担当になりますよ。【117】

(「これだけは嫌だっていう死に方はありますか?」と聞かれて)溺死はいやですね。

(舞台について)そういう客の思い込みっていうのもなんかうっとうしいですね。客は絶対安全な場所にいるみたいな。1回たとえばスプリンクラーをガーッとかけてみたらどうですか。【115】

(インタビューを終えて)この時もなんか鬱状態でしたね。本当に疲れてたと思います。何も映画の企画がまとめられず、何もできない時でしたね。【113】

【いのうえひでのり氏との対談】1999年8月10日(実写新作準備中というより、企画混迷中)

僕のアクション観は大野剣友会くらいです。【160】

犬は基本的に好きじゃない。愛玩用に改造された犬は哀れを通り越してイヤですね。【167】

僕はもともと人間がキライですから。極論すると滅びてもいいって思うし。【167】

映画は人間がパーツになるからいいんですよ。映画を作るっていう目的の元に自分たちがパーツになるわけですよ。【167】

僕自身ドライなのかウェットなのかよく分からないですね。【168】

MTV(アメリカのケーブルテレビ)は見てないです。【168】

(庵野さんの編集はMTV的だといわれて)飽きる前に切るというのが鉄則ですから。タルイのがヤなんですよ。【168】

でもタルクするところは、とにかくゆるくやる。タルイところを際立たせるためには、他を刈り込む。映像のいいところは時間を自由にできることですね。【168】

もっと観たいと思ってもここまでしか観せない。観る人が考える暇もなく次々に観せていけますからね。【169】

人が何かを考え付く前に、次にいってしまえば、なんかよくわかんないけど、面白かったっていうことになる。【169】

【常盤響氏との対談】対談日:1999年8月9日(実写新作準備中というより、企画空転中)

(「エヴァのOPはミュージックビデオみたいでしたよね」と言われて)
TVアニメのOPってここまではできますよっていうクオリティーの保証みたいなものなんですよ。
どこもOPだけはエネルギーを使ってますね。【174】

まずOPが面白くなかったら,チャンネルを変えられちゃう。
エヴァもOPを毎回変えたかったんです。【174】

パッケージになったとき,同じものが入っていると思わずサーチしちゃうでしょ。
(「サーチ」とは早送りの意味らしい)
だからといって,OPが省略されて1本しか入ってないのはヤだし。
なんとかEDだけはバリエーションを用意しました。【174】

カレカノのEDは毎回違うんですが,実写ビデオだからよかったんです。アニメでやってたら大変ですよ。【175】

エヴァでは歌を変えることにして,それが成功した。同じ絵で同じ歌っていうEDの固定概念がイヤだった。【175】

LDって場所を取るからヤなんですよ。小さい方がいい。【175

でもDVDってCDと同じ形で良いのに,なんであんなトールボックスで出すのかなぁ。【175】

僕は本はけっこう表紙で買うことが多いです。常盤さんの装丁した『インディビジュアル・プロジェクション』は最後まで買うのを悩みました。
結局装丁だけで買うのはやめようと思ったんですが(笑)【176】

最後の購買意欲をそそるのって,ジャケットなんですよ。アニメ誌でも何誌もあるけど,中身はあまり変わらない。その時に1冊何か買おうとしたら,表紙なんですよね【176】

パトレイバーのジャケットが実写なのはちょっとアレな気がします。絵をそのまま実写化というのはかっこいいと思えないです。
送り手側がそれをやるのはどうかという問題です。ああいうコトをやるとアニメそのものを否定する気がするんです。アニメだからできる一番いい長所を,否定してる気がして。
それって実写という方法論をまちがえている気がする。【177】

カレカノのterm.2の階段やterm.5の海の写真とかいいですね。(対談相手の常盤さんの仕事)【177】

常盤さんの写真というか,装丁がすごく好きなんですよ。本屋であ,いい,と思った表紙はたいてい,常盤さんでした。
カレカノのビデオ&LDのデザインワークをやっていただけました。【186】

【田口ランディ氏との対談】対談日:2000年11月24日(式日公開直前)

この映画のテーマは何ですかって聞かれることは多いですね。岩井俊二さんに「庵野さんて,愚問に対して厳しいですねえ」と言われた。
「インタビュアーがばからしいこと聞いてくると,ほんとに手厳しく答えるんですね」って。
「映画の見どころは何ですか」っていう質問ってイヤだなぁ。【188】

ルーチンにはルーチンの一番ありきたりなことを言って,期待されてることだけは言うまいって思う(笑)。
だから僕は雑誌方面では,評判悪いそうです。インタビューしづらい人だって。【189】

新聞は基本的に嘘書きますからね。嘘多いですよ。【189】

答えがみつからないと気が済まない。戦後の教育の悪いところですね。
人の考えたことだから必ず答えがあるだろうと・・・。【190】

エヴァで感じたことなんですが,あんなに膨大な人たちが答えを必要としているということが意外でした。
やっぱり,戦後教育のゆがみですかね。原因探したらたぶんその辺になるんじゃないかなぁという憶測でしかないですけど。【190】

僕は受験勉強に落ちこぼれた方なので。勉強らしいことをしたのは中学までですね。【190】

最初はイヤだったんですけど,10年以上いると東京もいいなと思いますね。【191】

(「思春期の時に興味を持った者をいまだに興味を持ち続けている。結局思春期の決算をずっとやり続けているような感じ。庵野さんはどうなんですか?」と聞かれて)
よくそう言われます。俺にはちょっとわからないですね。でも結局14~19歳ごろの興味をひきずっているのかなぁと感じます。
あの頃はアニメですね。漫画とか。【192】

「もうそろそろ自分も卒業かなぁ」と思ってた矢先に『宇宙戦艦ヤマト』を観たんです。当時自分が観たかった全てがそこにある感じがしました。
話が面白かったし,メカもかっこいいし,画も音楽も良かったし,戦記物の雰囲気もあるし,友達に自慢できるTVマンガだったんです。【192】

友達に布教活動してました。ヤマトがいわゆるアニメファンを生んだんだと思います。【192】

ヤマトはガムとかカードとか小遣いをはたいて箱買いしました(笑)情報に飢えてたんです。
ヤマトを知るためには本でもガムでも何でもあるものは買いあさりましたね。お年玉も全て使って。【192】

高2の時8ミリをようやく買って,それで自分でアニメを作った。自分が描いた絵が動くのを観てやたらと感動しました。
その後同じ友人らと特撮のヒーロー物のパロディとかを作ってました。それを文化祭で上映してすごく受けたんですよ。【193】

それからですよね,こういう世界に行くのは。中学・高校の時からそのまんま引きずってる気がします。【193】

『式日』は相互依存の話ですからねぇ。バランス悪いんですけどフィフティ・フィフティの依存じゃないのかな。【197】

人は結局誰かに頼っていないと生きていけないわけですからお互いにギブアンドテイクが基本にありますよね。でも中には100%他人か何かに自分をゆだねようとする人がいて。
そういう人はちょっと厳しいんじゃないのかなぁ。妄想に依存している人が多くて,僕自身それが一時期耐えられなくなって,そういう人たちに対して,思わず攻撃してたんですけど,
考えてみればそういう人はそうじゃなくちゃ生きていけないんだから,あまり攻撃しすぎるのもなぁ,と。
せめて認識しているというか,それに気が付いていて,確信犯としてやってくれと思います。妄想に行かなくては生きていけないのは分かりますけど,「自分はそうなんだ」というのを
せめて認識しててくれと。あの映画の中の女の子もそういう感じなんですけど。【197】

(「自分ができることということをやっぱり考えますか?」と聞かれ)できること?何ができるんだろうってこと,考えますね。
よく思うんですけど,ふと言葉に出るのは人の役に立ちたいという気持ちの延長なんです。なんで役に立ちたいかって考えると,自分に全然自信がない。
どっちかというと,自分という人間が嫌いな方で,せめて自分くらいは自分を好きになってあげないと,自分がかわいそうだと思いながらも,
やっぱり自分はどっちかというと,否定の方に入る。その否定の方に入ってるのを何とかプラスの方に持って行くとする気持ちが,せめて人の役に立ちたいというバランスを取ってるのかなぁ。
こんな自分でもお役に立ててる,ここまで毎日深刻に考えている訳じゃないけど,たぶん根底にそういうものがあるんじゃないかと思います。【198】

式日の芝居に関しては監督としてあまり演出してない。そこまで自分の妄想にしたくない。映画が続けられるっていうのはそこにあるんですよ。
僕が物書きだったらたぶん1年持たないと思います。それは一人で作業するから。一人で作業するのは脚本ぐらいにしておきたいですね。
脚本は映画の設計図なので,最終的に形にするときは1人で作業しています。それからあとは映画は色んな人の色んなモノが入ってくる。
その時のスタッフとか,役者で作るものが全く変わっていく面白さがあるからいいですね。【199】

同じ作品と付き合うのは2年が限度ですかね。それ以上はつきあいたくない。エヴァの時は3年半も付き合っていたんで少しやりすぎたなぁって思います。【200】

実写に挑戦してみたのはアニメーションに自分の限界を観てしまったことと,実写が持っているスピーディな感覚を知ってしまったことです。
アニメの場合はまともなものを作ろうと思うと,どうしても2年くらいかかる。実写は半年で完成できますから。【200】

(「撮影を始めてから終わるまでっていうこと?」と聞かれ)全部ですね。式日では今の形の企画書のペラを書いたのが1月6日で,7月7日に完成初号ですから早いです。
半年で映画が一本できる。【200】

ジブリのアニメのプロデューサーが撮影現場に来たんです。(鈴木P?)1カット撮るのに5~6時間かかるのを見ていて「実写は大変ですね。1カット撮るのに6時間もかかって」と言っていましたが、でもアニメは1カット作るのに2日かかるんですよ(笑)
それでもできて数秒がスタンダードです。しかし実写の場合,6時間で1分も10分もできてしまう。これはすげえです!(笑)自分の余生を考えれば,実写の方が本数作れるなというのもあります。【200】

実写だと監督だけに徹すれば年2本できる。でもなかなかモチベーションが持たなくて,やっぱやれて1年に1本になっちゃうんですけど。【201】

(「アニメはもういいやって感じ?」と聞かれて)アニメはもういいやと思いました。もう冷蔵庫が空になるまでアニメをやってしまっていたんですね。
新しい材料が入らないとアニメではもう料理できない。で,実写映画という隣の冷蔵庫に行ったら,やっぱりよくわからなかったです。【201】

去年はいくつものオリジナル企画を考えては自分でつぶし,考えてはまたつぶしの繰り返しでしたね。いきなり対策をやらなきゃというプレッシャーのようなものもあったと思います。
食べたこともない知らない食材ばかりだったので,料理の仕方もまるで分からなかったんです。その時の自分の器に合う企画というのが『式日』しか見いだせなくて。
切実な思いで作ってるんです。すみません,これしかできませんという。【202】

『式日』は自分の中ではかなりポピュリティを持たせてるんです。いわゆるエンターテインメントとは違うんですけどね。男と彼女をはじめ猫以外に名前が出てこない。
観た人が何とかさんではなく自分のことのようにとれるようにです。あとは台詞やディスプレイ,ビジュアルも含めてキーワード的なものもかなり分かりやすくしましたし。【203】

方法論としては分解と再構成しか知らないんですけどね。【204】

(「女の子が毎朝屋上に行って「今日も私は大丈夫」ってやってますよね。あれって原作にあるんですか?」と聞かれて)あ,ないです。
僕も1回だけやったことがあったんです。4年くらい前ですけど。会社の屋上に上って,その時酒も飲んでて,もうちょっと深酒してたらちょっと危なかったかもしれません。【205】

屋上のへりギリギリに足を出して,飛び降りられるかどうか確認したんです。飛び降りればそれまでだし,飛び降りなきゃまたしばらく大丈夫と酒の勢いもあって,プラプラしたんです。
でも会社の屋上って3階とちょっとしかなくて,下がはっきり見えるんです。のぞくとかなりリアルな映像で痛そうなんですよ。それが思いとどまる最大の理由でしたね。
もっと高けりゃ下に行くまでに気を失いそうだし,これならいけるかもしれないと思う気がするんですけど,
3階という中途半端なところだと1度じゃ死ねない感じもするし怪我は嫌だしなぁとリアルなところを考える。そのときは結局なにもしませんでしたね。【206】

電車での自殺も1回考えたんです。なんか変な言い方だけど「どうなるんだろう?」という興味の方が大きくて。
考えたけどあんまりよさげじゃなかったんで,それもやめてしまいました。電車停めるのもすっごいメーワクだし。【206】

僕らの世代はノストラダムスの世代。なんか面白いことが起こるんじゃないかって思っていたんですね。【207】

阪神・淡路大震災の時もサリン事件の時も最初は虚構っぽかったり「日本でこんなテロが!」と正直興奮したりしてたんですが被害者の方がいるとダメですね。
現実に人が死ぬのはやっぱやり切れん感じがしますね。【208】

(「映画って撮り終わったときにどういう気分になるもんですか?」と聞かれて)回数が重なるとだんだん変わってきますよ。できたときの喜びとか,スタッフの顔色が気になるとか。諸々あります。【208】

(「私は本を書き終わるとなーんにも面白くないんですよ。見たくもないんですよ。本でも書いてる時だけが楽しいんです」と言われて)それはあります。同じです。【208】

終わった映画はまず見直さないですね。エヴァもこないだ原画本を作るのに観直したくらいです。なんか5年ぶりに見直すとですね「あっ結構面白いじゃん」と思いました。(笑)
こりゃみんなが騒ぐのも分かる。よくできてます(笑)【209】

↑これがのちの5.1ch版DVD,新劇場版に繋がっていくのだろうと思われる。

シナリオはある程度の映像イメージのラフがあって書いてます。【209】

セックスをシナリオに使うんだったらSMっておもしろそうだと思うんです。性と暴力は万国共通で,最高のエンターテインメントだなあと確かに思いますけど,
その中でも異世界感を味わえるのはSMだと思います。よく作り手がSMに走るの,分かるような気がします。日常の絵院長で一般の人たちが面白いと思うのは犯罪とSMくらいしかないんじゃないかな。【211】

『式日』のラストは僕としてはギリギリの選択で,あと半歩のところまで行ったけど,なんとか変な世界からは逃げ切るのかなぁと思わせたんですが。
半歩。下がってはいない。半歩進んでるんですね。【211】

『式日』は僕の中でかなり僕らしくないんです。あんまり自分が好きな世界ではないんです。【212】

(「式日のような映画を要望されるでしょ?」と言われ)言われますけど,あれ撮ったからあっちの方面はしばらくいいやと思います。できるだけ違う感じのものを撮り続けていきたいですね。【212】

『式日』は案の映画なら他の終わり方があったと思うという人がいるんです。そこに収まるのは気持ち悪いなぁという気がしてたんです。そういわれて青の終わらせ方で良かったんだと最近確信しました。【212】

↑について,ひとつは,主人公が死んじゃうっていう終わり方。自分らしい終わらせ方は途中で男が逃げ出す。「こりゃ,かなわんんわ」って感じで逃げ出すと思います。
それらは今回「やめよう」って思ってました。ただお客さんの中にはエヴァみたいな壊れたラストを期待する人もいると思います。【212】

映像のいいところは一方向メディアなので客が文句を言っても映画は変わらない。それが映画のいいところですね。小説もそうです。【213】

『式日』のエンディングは違うバージョンがあったんです。キレイに片付いた彼女の部屋の中からカメラがずっとワンカットでそのまま商店街通り抜けていくというもの。ラストは太陽です。【213】

『式日』のエンディングは実は最後に雨が降っているんです。一部の人にそういう毒のある演出は面白いだろうけど,前向きに映画を観てくれてる人には申し訳ないなって思って雨粒がレンズに着く直前,1コマ前で終わってます。【213】

AVの周辺にいる人は面白いです。ああいう人たちにはかないません。すごい人たちです。それだけの力が自分にもほしいです。入っていきたいですね。【215】

結婚したり子供ができたとたんに,創る側にいけなくなってしまった漫画家を知っています。【216】

村上龍さんは極,普通の人だと思うんです。俗物が俗物じゃない人にものすごくあこがれているという視点で作品を書いてる感じがします。
僕は村上さんがそれを認めた『5分後の世界』がすごく好きなんです。【217】

あまりモテない。圧倒的に女性の知り合いが増えたのはエヴァ以降です【218】

(「自己肯定的に自分のことを観ないって子供のころからなんですか?」と聞かれて)子供の頃はもっと浮き沈みが激しかった。「自分ってイケてるんじゃないか」って思ってて。
すぐ出鼻をくじかれて「やっぱ,ダメなんだ」と,これの繰り返しが激しかった。だんだんこの繰り返しの山がスッと平らになっていったんです。【219】

今の人は生き急いでる感じがしますね。自分の親や周囲の大人とか世間の情報から自分がどういうところまで行けるのかとか予想できちゃうんでしょうね。【219】

この間すげえ頭が良くて図書館の本はほとんど読みました。でもゲームはやらない。小説や経済の本を観てる方が面白いって子と会った。
ああいう子供がいればにほんはまだまだ大丈夫だなぁと思いましたよ。【220】

水が好き。形が無いから器によって形が変わるところが好きなんでしょうね。川のせせらぎ音も好きです。去年『となりの山田くん』の試写会に行くつもりだったけど急に富士山に行きたくなって,
御殿場まで行ってその場でうろうろしてたら川を見つけてすごくうれしかったんです。その時に自分は風景の中では川が好きなんだって確信しました。
川にかかってる橋も好きですね。用水路をちょろちょろと流れているちっちゃい川とか「あっ,ここに川がある」って見つけたときにはうれしいですね。
水が流れるっていうのが好きなんです。あと胎内・・・母親の体の中で羊水で満たされ,生命というものを育てたりというイメージが良いのかな。水が好きなんだなぁ。水に満たされてる時が好きです。【220】

自然は嫌いなわけじゃないけどそこまで好きじゃない。【221】

廃墟が好き。廃墟には時間っていう自然が流れていると思うんです。人工物であり,自然との中間にある。自然に戻りつつある人工物が廃墟になる。
90年代の建物は全然興味ないですね。つまんなくて。この間霞が関ビルを見て「やっぱりいい」と改めて思いました。【222】

90年代の建物がつまんなくなったのは一面性だと思う。裏が無いんです。見たらすぐわかっちゃう。その後ろに何もない。
近代の乗り物や平気なんかもつまらない,ツルッとしたデザインが多いですね。何か人のにおいがしないというか,コンピューターで計算された感じがします。
昨日にプライオリティを持って行くのも分かりますが,機能美だけっていうのは,ほんとに一面的なものになると思う。【223】

子どもの時は核ミサイルがいつ飛んできてもおかしくないと,子どもの頃は核がリアリティあったんですね。
いつか核ミサイルが落ちてきて死ぬのかなぁ。でもそれは東京だから,山口は大丈夫なのかなぁ,なんて,戦争っていうのはそんな感じでした。【224】

自分は相手に合わせて喋り方を変えるところがあります。何か,田口さんもそんな感じかなぁと思いました。【227】

【林原めぐみ氏との対談】対談日:2000年12月12日(式日公開直後)
エヴァは贅沢な林原さんの使い方だった。例は台紙がなかったから,代わりに色んな声をやってもらったね。
林原めぐみを呼んでおいて,1話で「はい」しか台詞がないなんてほんと贅沢って言われてた。【232】

『式日』のヒロインのキャスティングは庵野さん。原作を読んだときに本人がやらなきゃ,これはしょうがないよなと思った。主人公の岩井さんは鈴木Pの推薦があった。【237】

『式日』の前は全然違うのをやろう,やろうと思って結局できなかった。いきなりそっちに体かな,心かな,その辺が移行できなくて,半年ぐらいグルグルと空回りしてた。
空回りの先にあの原作があったんです。商売を考えたら難しい企画で,お金は出しづらいし,元も取りづらい。決して万人受けのエンターテインメントではないから。【239】

(「パンフかな。大竹さんのシーンがアドリブがどうのこうのって書いてあったんですけど。脚本がなかったとか。」と言われて)台本あると,台本の通りにしかならないと思って。あれが,何かイヤ(笑)【241】

大竹さんに結局説明しなかった。「台本が上がるんじゃないですかねえ」とか言ってたんだけど,ウソでしたね。スタッフも出演者もものすごい不安になってた。【242】

大竹さんも「自由にやってください」というのは今までやったことありませんと言っていた。終わるまですごい不安だったみたいだけど終わったらすごい気に入ってくれてたからよかったんじゃないかな。楽しそうだったよ。【243】

林原「エヴァですごい覚えているんですけど「赤ん坊が生まれるような声」っていうのと,あとレイちゃんが何回か『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』を歌う時に,1人目のレイは冷静に歌って,2人目のレイはもうちょっと冷たくて,3人目のレイは,猫を無表情でギュッてひねりつぶしちゃったりするような歌い方でって。」
庵野「猫を絞め殺すような歌い方」
林原「そういうよくわからない要求をされながらも,こうかな,こうかな,こうかなって思う作業が嫌いじゃないというところを実感しながら,のこのこ帰ってました。【245】

林原「監督が覚えているか,覚えてないか,すごい印象的なセリフが合って,それは私の中で自分にも刻んだし,ああ大事なことだなと思ったんですけど,ある子が自慰行為をするシーンがあって,
その声を女性がやってたんですよね。その時「私は男じゃないし,わかんないし,どうしたらいいかわかんない」って言って,ワッとなったときに「非現実なところとか,非リアルなところにリアルはあるので,
思ったままでやってください」という風に監督が言ったんです。「リアルじゃないところに,リアルさと説得力があるので」って言ったのかな。おーって思って。
庵野「そんなの言ったっけ?(笑)」
林原「今はそう思ってないんですか?」
庵野「そういう考えはあるんだけど,そんなこと言ったかな」
林原「そうしたら,やる人も納得して,「はい,わかりました」って言ってやってて。だから,すごく,なるほどーって。【246】

当時セルがイヤでイヤでしょうがなかったね。セルの持っている無機質な感じがすごいイヤだった。でもそこがアニメのいいところなんだけど,そればっかりやっていると,なんかどんどん嫌になってきた感じかなあ。【246】

アニメーションはアフレコから先の感覚だけは実写に一番近いね。【247】

字幕だけで,人の声がしないアニメって,俺はやっぱりあまり面白いと思わない。何か足りない気がするの。やっぱりそこに人の声が欲しい。【247】

(「監督という人は頭の中に絵があるんだなあっていう気がしたんです」と言われて)僕はアニメにはあるけど,実写はなるだけイメージ作らないようにしてる。
これはたぶんアニメを長くやりすぎたせいだと思うんだけど,どちらかというと,台詞に行ってるの。モニターは画角とかしか気にしなくて,どっちかっていうと,台詞だな。
今の台詞がよかったかどうかで,結構OKテークは判断する。これは長年そういう仕事をしたからかもしれないけれど,声の感じを取っちゃうね。【249】

僕は自分の声が嫌いです。小学校の時にレコーダーで録って聞いてみたらすっごい変だったんだよ。【250】

自分の首って逆三角形なの。下の方が細いから声が高いのかなあ。(高いか?)もうちょっと自分の声がよけりゃなあ。もっと出るのに(笑)
モブの声とか,足りない時は自分の声で埋めたりしてるケド。最後の手段として。基本的に自分の姿や声がイヤなんだろうね。【250】

出るのは嫌いじゃないけれど好きだというわけじゃない。出るのが好きだったら,もうちょっと積極的に出てるね。【251】

林原「監督って,レールが好きなんですか」 庵野「線路,好きだね」
林原「『ラブ&ポップ』にも出てきたじゃないですか,レールが。」
庵野「そうそう。列車が好きなの。線路とか,電車が。」
庵野「アニメで線路は大変だから,あまり使わないの。だからエヴァの時全部リニアにしたんだよ。上はどう見ても普通の電車なんだけど,とにかく線路だけは描きたくない。
線路描くの大変なんスよ。ゴマカシきかないし,平行線で描かなければいけないし。枕木がまた線が多くて立体で大変なの。」【252】

林原「バスタブも好きですか。式日で出てきたときアスカと重なったんですけど」
庵野「そういえば入ってたね。忘れてた,すっかり。あれ,同じ意味の使い方じゃないかなあ。何だろうなあ。無意識なところでしょうね。」
林原「私は,あの中でうずくまるという,すごく狭いところにいたがるような。それをあれこれ考えるのも違うなあとおぼろに思ってたんです。」
庵野「イメージ的には胎内回帰だもんね。母親の中。子宮代わりにバスタブを使っているんじゃないの。なんで子宮がバスタブなのか,自分でもよくわからない。産湯のイメージ?
へその緒を切ったら湯に入れるから。【253】

とりあえず(『式日』の)次は変えるんじゃないかな。あまり同じのはやりたくない。結果として同じになっちゃうのはしょうがないですけど。【255】

「自分の中にあるもの」はできるだけなくしたいんだけどね。『式日』はそうだよ。できるだけ自分の世界を削ろう,削ろうと。削って,そこにいる人のをはめ込んでいく。【256】

あまり自分で自分を観たくない。それは面白いとは思わない,自分のやっていることとか,考えていることとか。【257】

林原さんはすっごく頭のいい女性ですね。自分に何を求められているのか,瞬時に判断できる方です。勘が良いんですね。
それでいて役の入り方というか,掴み方が的確というか,シビアで良いです。綾波レイを林原さんに決めたのは天佑だったかと思います。
自分の場合林原さんを始めキャストやスタッフに常に恵まれています。アニメや映画の神様には,好かれている感じがしますね。ありがたいです。【259】

【Dr.エクアドル氏との対談】対談日:2001年1月19日(実写新作準備中)
雑誌の記事を観て庵野さんが非常に興味を抱いた劇団がゴキブリコンビナート。表現するうえでぶつかる閉塞感と格闘する様に引かれるらしい。どうしても話してみたいと庵野さんの切望により対談が実現した。【261】

(どこで客が引くのかという話になった際に)とても面白いドキュメント映画で北海道をAV女優と二人で旅をする話(『由美香』平野勝之監督)があるんですが,最後にヒロインが自分の排せつ物を食べるシーンになって観客は一斉に目を背けるんです。
クライマックスなのにここを観ないとはお前ら何事じゃー!?という(笑)うんこをするところと,それを食うところはほとんどの客が観てませんでした。これが境界線かなと。
この映画でテーマになっている部分を観ないというのは映画としてとかじゃなくて生理的にダメなんでしょうね。【263】

うんこといえばハイレグジーザスの芝居でもやってましたね。朝出したものを客席に飾っているんです。上演中に役者たちがそこに手を突っ込んで指の先につけてそのまま客席になだれ込む。
その時の客のパニクリようは尋常じゃないです。全然本気度数が違う。自分の体や服にうんこがつくことがそんなに怖いのかということがよくわかりました。【263】

最近日本も感覚的にオープンになってきていてモラルの感覚がない。だから少々インモラルなことをやったってお客はそんなに喜ばない。逆に受けるためにインモラルなことにインフレが起きている。
アンモラルに行きついてもまだ先に行くしかないんでしょうね。そういういきづまった状態を観るのが好きなんですけど。【264】

瀬戸内は気候が温暖で,水も豊富。だからか人種も穏やかです。【265】

僕が子供の頃はまだ世間は戦後を引きずっていましたね。戦記物はあちこちの本でも漫画でも溢れてたし,『鉄人28号』も旧日本軍が作ったロボットの話だし。
『宇宙戦艦ヤマト』もたった1艦で敵本土に殴り込みをかけて,勝利してしまうという話だし。戦争に負けた口惜しさとかを,願望として出してたんですね。
それでいて,ヒューマニズムも訴えています。僕らが太平洋戦争を2次的に引きずる最後の世代じゃないですかね。【267】

(好きな漫画の話になった時に)『宮本から君へ』は読めなかったです。とにかく辛かったから。
『ワールドイズマイン』は全体的に人が死ぬことを当たり前にしている世界観がいいですね。犯人は普通の男の子でしたけど,その母親が自殺する件は突出して良かったのですごいと思いました。【268】

僕はヤケになった人が好きなんです。エヴァに関しては,「今,敵を探した時に結局自分にしかならない」っていう話です。今時世界征服もないですし。
自分も嫌い,他人も嫌い,でも他人もいないとねっていう,基本的にはシンプルな話なんですよ。【269】

ゴキブリコンビナートの芝居はマイフェイバリットです。初め,雑誌の記事でチラっと読んだだけだったんですが,なんか強烈に引っかかってました。
いきなり,行き詰ってる感じが良かったです。追い詰められ度数が高いというか,もうどうしようもない。という切羽詰まった感じがすごく心に響きました。
途中から近所の居酒屋で話をつづけたんです。そっちも面白かったんですがあまりにドメスティックな話題なので掲載されませんでした。【270】

(ダイアローグに関して)「絵が悪くても,脚本が良ければ救われるという,コストパフォーマンスの高さがある。幅広い観客をつかむためには,絵よりもダイアローグに気を遣う【271】

庵野監督は平野監督の『由美香』にはまるでかなわない。としきりに語っていたとのこと。【280】

【座談会】(SM嬢と漫画家と一緒に。全員お酒を飲んでいる)
(「ミサトと加持みたいな恋愛って実体験なんですか?ああいう経験が1回でもあれば恋愛にどん欲になれると思うんだけど」と聞かれて)
ハズなんだけどね…あぁ,でもセックスって最初から冷めてたなぁ。なるほど,男は夢中になるなって。【288】

愛がほしい。【288】

お金はないよりはあったほうがいいんだろうけど,製作費以外にはあまり興味ないなあ。使うのはスタッフ旅行か。みんなの働きでできた作品だから還元するの。エヴァとカレカノで蔵王に行ったし。【288】

体育はずっと成績2だったのがずっとコンプレックスだった。【289】

他にコンプレックスというとモテない,とか。中学ではまだモテたのかなあ。
高校も大学もモテなかった。エヴァ意向だよね,多少なりとも女性と話す機会が増えたのは。エヴァやってるときは女の人と話すことなかったもんな。
少女漫画を読むくらいしか,女性心理に触れることってなかったしなあ。何年間も。【289】

【あとがき】
どうもこの「文章」というモノが苦手です。つい,肩に力入るというか,妙に構えちゃってサクサクと気楽に書けない。この「あとがき」というのも,苦手です。
なんかこう,後ろ向きというか,ネガティブなイメージという感じがしてイカンです。すぐ言い訳になってしまいます。自分が書くと。【290】

最近も思うに,エヴァのTVシリーズが終わってからずっと,自分は迷走している気がします。何かをなくして,何かを求めてフラついてる感じです。
それは居場所なのか,表現手段なのか,主張みたいなものなのか,恋愛なのか,新たな自分自身なのか,まだ他の何かなのか,分かりません。【293】

最後にこの本の関係者にお礼を言って〆。

↑誤字ってるところはまた後日修正します。

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第三の役立たず

松尾スズキさん(俳優、劇作家、演出家、脚本家、映画監督、コラムニスト)が著名人と対談する本。その中の一人に庵野さんがいる。(しかも最初の一人目)後にこれをきっかけとして『庵野秀明のフタリシバイ』という庵野さんの対談本でも松尾さんとは対談することとなる。

エヴァの謎なんてどうでもいいと思ってる【34】

中学生の頃は優等生だった。学級委員やってた。【36】

宮崎駿さんに「人間嫌いなんだろう」と言われたことがある。【41】

動物嫌い。生き物が嫌い。食べ物もそう。見た目が嫌い。猫は好きだけど犬はダメ。特に座敷犬。犬のくせに人間慣れしてるから知人の家で飲んでるとツカツカとやってきて膝の上に乗ってきた。反射的にダブルチョップを食らわせた【41】

昔は犬の死骸なんかもいっぱいありましたよね。今の子供はそういうのを見慣れてない。それはキビシイと思っている。(これたびたび言ってる)【41】

(日本人離れした顔をしているから)小学校の頃から『外人』と呼ばれていた。【47】

手塚治虫はあんまりハマらなかった。唯一のめりこんだのが『火の鳥』【52】

松本零士の描く男って女々しくていいですよね。あと永井豪とか中学の頃はその辺。別マから始まって少女漫画を読んでた。高校入ると荻尾望都とかメジャーどころは一応押さえてた。『花とゆめ』とか白泉者のものは買ってた。『ララ』は創刊から買ってた。【53】

『残酷な神が支配する』いいですよ。我慢しきれず9巻まで出たところで買ったので「くう、10巻が~!」ってなっている。(ちなみにエヴァのOPはこの漫画のタイトルからとったとWikipediaに書いてある)【53】

少女マンガについてべた褒めする庵野さん【54】

でも本宮ひろ志読んでしまう自分もいる。ああ、本宮ひろ志は心の中に生き残ってるなあと。【54】

ずっとロボットとかそういうものに強く憧れていた。強さとか、パワーですよね巨大ロボットというのは。あからさまにそれのメタファーですから。戦艦が好きなのもたぶんあれが強さの象徴だからだと思う。対艦巨砲はあからさまにチンチンのメタファーだと思う。そういうものにまるっきり自信がなかったから。子供の頃は本気で仮面ライダーになりたいと思っていた。【61】

ロボットものとかすごい好きだったんですけど最近さっぱり冷めてしまって。エヴァ以来巨大ロボットとか巨大ヒーローとかそういうものに対するあこがれがまるでなくなった。なんでだろうと思ったがたぶんそれに代わる力みたいなものを自分が持っちゃったから。あの頃(エヴァの頃)は完全に飢えでやってたけど今はたいしたことはなくても一応権力みたいなものはあるわけだから。しかしそれを得るとむなしいだけだった【62】

(エヴァの謎について)今の日本には「答えをくれ」という風潮があるってことだと思う【63】

世間に答えとか意味とかってないと思うんですよ。そこにあるのは自分の価値観だけで。相対的なものだと思うんですよ。統一の価値観がなくなっちゃってる。宮さんぐらいまでは欧米に対するコンプレックスと憧れがあった。ところが僕たちにとっては東京が憧れ。「東京に行けばなんとかなる。あそこに行けば夢が叶う」【64】

僕たちの前の世代には経済成長とか目的があった。上に対して楯突くエネルギーがあった。でもそれが失敗するところを見てるからみっともないな、カッコ悪いなと思ってた。経済成長の後に水俣病や公害が来た。高度経済成長の反動というものを僕らは見ている。それからドルの絶対性が崩れるところ、石油がなくなるということを見ている。そこに残るのは「信じられるものはなにもない。どういう価値観を信じても結局裏切られる」【66】

「自分たちが命を懸けられるイベント」というものがなかった。僕たちは漫画とテレビしかない。アニメの話題で1日過ごせる。こんなことで一年つぶせるのって平和な国ですよ。アニメの話題で一日つぶせる国でアニメを作っていけるっていうのは幸せなことかな、と【66】

(「チンコにこだわりますよね。大きい小さいとか」ということを聞かれて)それはこだわりますね。男の象徴ですから。【68】

ヒモ願望はあるがヒモはいざとなったら女を守るもの。だからヒモに今一歩なれない。【68】

僕はホモはダメなんですよね。レズはいいんだけど。やおい本もダメですね【69】

アメリカでNASAのトイレに行った時に外人のチンコを見て「ああ、戦争に負けるわ、日本は」って思った。あれはちょっとカルチャーショックだった。【69】

(「SかMかってどうですか」と聞かれて)両方あると思います。SかMかっていうのはコインの裏表だと思います。僕はMっ気が強いのかな、女性に対しては【70】

洗濯も掃除も3年以上やってない。自宅に至っては7年やってない。【72】

自分自身に何もない。誇るものもないし守るものもない。そういうときにどこに行くかというと作品ですよね。そこに自分のプライド全てが行ってしまう。自分自身よりも作品を守る。それは脆弱な自分を理想の自分に変えていっているわけですから。メッセージというものは本当にないですよ。自分をすべてそこに投入したのがエヴァですから。人生で一度でもそういうことができたのは幸せなことだな、と。【72】

(女性について)エヴァ作ってた時には支えてくれた人たちがいて。あれは助かりました。いろんな意味で、そうやって支えてくれた人っていうのが。テレビの後5人いる。そのときは自分は幸せだなと思いました。でも肉体関係にはいかないんですよ。友達感覚。(EOEのコメントで出てきた5人の女性は主演声優ではなくこれ?)【73】

(「庵野さんみたいに才能がない人は何で「空白」を埋めればいいんでしょう」という質問に)それは女でもいいし、子供でもいいし、サラリーマンだったら愛社精神っていうのもあるかもしれない。僕は空白が他の人よりも深いんでしょうね。しかもでかい。でかいわ深いわ、えらい話ですよ【74】

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マジック・ランチャー

・庵野監督と有名映画監督岩井俊二監督の対談本。1998年6月15日発行。

・岩井監督の発言は(岩井監督)と表示。それ以外は全て庵野監督の発言。

・ものを作らせてくれるのは締め切りだけ。締め切りがなかったら、なにもできない。 【15】

・ファーストシーンは思いついても、ラストシーンは最後の最後で出てくる。その方が面白いような気がする。どこにいくか分からない。まあそういうのは制作には嫌われてるんですけど。

・台本も、ラストのあたりは最初には書かない。【18】

・一つの作品を作るたびにアイディアのストックをみんなおろしちゃう。冷蔵庫の中のもの全部洗いざらい無くなる感じ。【19】

・以前は自社企画にこだわっていた。原作付きはイヤだなと。だからエヴァまでに4年も間が空いてしまった。4年溜めこまないとあそこまでできなかった。【20】

・四月物語の主人公(卯月)は田舎者に見えない。華があって役者としては良いんだけどあの企画としてはどうかなと思った。【22】

・『スワロウテイル』のトイレで蝶を追うシーン、あれにはやられました。グーでしたね。【23】

・『Love Letter』で中山美穂が向こうからチャリでやってくるシーンにも「ああやられた」と思った。(すれ違いのところ)【23】

・↑のカットは樋口さんから「すごい1カットがあるんですよ」と聞いていた。【23】

・『スワロウテイル』では↑のトイレの回想シーンが一番好き。(それまでは「まぁ普通かなぁ…」と思って見てた)。タトゥー入れてるところも好き。「なんかこうこの子、胸見せろよ、ちゃんと出せよ、って思ってたらちゃんと出した。オーケー!勢いや良し!と(笑)」【24】

・↑のトイレの回想シーンではあそこでぼろぼろ泣いてしまった。スワロウテイルには技術的な部分、ストーリー的な部分、ここがこう失敗してるとかいくらでも書けるんだけどそういう細かいのは全部あれ(蝶のシーン)でオーケー!スワロウテイルは良かったですよ。【24】

・エヴァは全体の構成案は最初は半分もなかった。後半はほとんどラフ。人類補完計画もキーワードでしかなかった。最初はもっとロボットものだったのだが途中からああなってきた。やりながら「何を補完していくか」って考えてた。まず最初に言葉のカッコよさがあって使ってたんで、中身は明確には決めていなかった。どこに行くのか決めてるとつまらないから。だからあんなにまで人さまが気にすると思いませんでした。【25】

・岩井さん「エヴァってナディアと繋がる話なんだと思ったんですけどそういう構造はなかったんですか?」

庵野さん「遊び的にはありましたけど。要するに、僕の中では延長なんです。いちばん最初に書いたエヴァの構成案の中には日本海に沈んでいる遺跡付近での水中戦というのがあったんです。ナディアの最終回で沈めたノーチラス型の宇宙船。あれをサルベージに行く話を書いたんです。エヴァで水中ものを1本ぐらいやっておこうと思って。あれに似たアイディアはマグマダイバーに持って行っちゃったんで、まあいいかってことになった。【26】

・最初に全体的に用意しておいたアイディアを前詰め前押しでどんどん使っちゃったんで、相当あとあと厳しくなっていった。【26】

・最初に引いた路線がやっぱり厳しかったんですよ。いわゆるテレビアニメ的なごまかしはやめよう。最初は、毎回めでたしめでたし路線で行こうと思っていた。僕はそれにこだわったんだが、周りのスタッフが「そんなの嫌だ。そんなのだったらやる気がない」って。「それじゃ、ハード路線まっしぐらにすっか」と言ったら、「はあ、分かりました」でガシャンって(笑)【27】

・その後はただ地獄です。自分の中で嘘がつけなくなって。そもそも最初に嘘があるんですよ。少年がロボットに乗るっていうのは嘘なんですね。その大嘘をスタートして、それを詭弁でなんかこう理由づけていくのに一苦労ですよ。だから途中で一回乗らなくなるし、さらにもう一回乗らなくなるし、そのたびに詭弁を弄するようにしてたんですけどね。あれはもう限界ですよ。【28】

・(ナディアと点と線で全部繋がって来るのでドキッとしたという岩井監督の発言を受けて)同じ人間がやってるから同じになっちゃう。ナディアのマリーとエヴァのアスカは同じ髪の色。そういう分かる人にしか本当に分からない繋がりだけなんだけど。もうちょっと余裕があれば、あっちの世界のアダムとこっちの世界のアダムを繋げようと思ったんだけど、余裕なかったです。あんまり突っ込むと、ナディアはNHKで局が違うので、キビシイかなと。うちはナディアの権利持ってないんで。ひ孫請けでしたからね。【28】

・(ナディアとのリンクは)精神的なリンクなんですよ。ストレートに物理的なリンクは出してないです。【29】

・でも心の中では繋がっている。同じ人間ですからしょうがないです。一番最初に出した企画書ではストレートに繋がってた。それはまだ当時ナディアは人気があったから「それの続編っぽくしておけば・・・」という。ストレートに続編にはしないけど、そういうのでちょっとは企画も通りやすいだろう、という。まあそういう商売っ気みたいなもんです。【29】

・(「エヴァはテレ東の6時半にあれが流れてたってのがすげぇ」という岩井さんの発言に対して)そう、水曜の6時半にあれやってたっていうのがイイんです。ナディアもあれをNHKでやってたっていうのが。(イイ)【29】

・ナディアのエレクトロさんの弟の腕が落ちたシーンとかは「もうイケイケゴーゴー」。あれはNHKだからこそやらなきゃってやってました。切り口を見せなきゃいいんですねって。じゃ絶対に切り口は見せませんからって。【30】

・NHKは表現というよりは言葉にうるさかった。「過去にクレームが来たセリフ集」というのがありそれがダメだった。あと屠殺もダメだった。【31】

・ナディアが肉を食わない理由の一つとして屠殺をやろうとした。「ナディアが動物と話が出来る」っていう設定はNHKのほうにあった。「動物と話ができるのに肉を食うっていうのは俺は許せん」っていうのがありまして。だから肉を食わない人種にしましょうと。どういう動物とも話が出来るんじゃあ、何も食えませんよ。牛と豚とだけは話が出来ないっていうわけには(笑)【31】

・じゃあナディアがどうして話ができるようになったかというきっかけ話を考えた時に、屠殺にしようって思った。うちの田舎では朝方に屠殺をやってて、その鳴き声がたまに聴けたのだがそれがすごい悲しそうだった。NHKから屠殺だけはいやめてくれと言われた。【32】

・これはもうあちこちで言ってるけど僕らの世代はイベントが何もなかった世代だった。つまり「依り代」になるものがない世代。戦前の人には天皇が、戦中の人には戦争が、戦後の人には復興や高度経済成長や学生運動があるけど、僕らには何もない。あるのは魔法の箱みたいなテレビだけだった。【42】

・とんねるずが結局、昔の番組のパロディ以外何もできないのはそういうことなんですよね。僕らが作ってるものもそうです。そういう、前の人たちがやっていたことを自分たちなりにやっていくモデリング等は誰でもやってると思うんです。【42】

・最近の日本は平和。日本では今死体が隠蔽されてるから、死というものがリアリティを持たないんです。僕らが子供の頃は町中に犬猫の死体がけっこうあった。川の藻に犬の死体が引っかかってたり、路上にひかれた犬猫ってけっこう長い間放置されて腐乱死体になってたのに、最近そういうのも全然見なくなった。とくに都会にいるともうダメ。血も死体も見慣れてないから、そういうのにいちいち過敏に反応すると思うんだけどそれは平和な証拠。【45】

・岩井さん、アニメーションは楽ですよ(笑)あんな甘い業界なかなかないですよ。俺みたいないい加減な人間が生きていくのはここだなぁと。一気に世間ナメますよ(笑)【48】

・(↑について)まともな人間は、あそこにはいないですよ。逆にまともな人間はアニメーションの世界にいられない。社会的な人間は皆無で子供ばかりの業界なんですよ【48】

・「アニメはアニメ。実写は実写」というのは根強くあると思う。「アニメなのによくできてる」とか「アニメのくせに」「アニメにしては」とか。あと、アニメーションは子供向けのものっていう決めつけがけっこうある。でも、そういう固定観念は逆手にとって、利用した方がいい。【49】

・そういう点ではAVも差別されている。次はAVもやろうと思ってる。なかなか切り口が見つからなくて暗中模索なのだが、AVはけっこう日本では進んだ映像だと思う。ドキュメント映像という点において。テレビよりはるかに進んでる。僕も遅まきながらようやく知った。【50】

・最近ようやく他のジャンルの表現も見に行く余裕が出来てきていろいろ見てるのだが演劇も面白い。もっと早くに見とけばよかった。でも日本映画だけはもう客を失いつつあるからそのうち伝統芸能になると思う(笑)【50】

・日本の特撮はすでにキビシイ状況。米国でデジタルで撮った洋モノゴジラがきたあと果たして日本で着ぐるみをしじしてくれる一般客がいるんだろうか、と思いません?【50】

・人が入っているのが丸わかりの着ぐるみというのは、お客さんのイメージに頼るしかないもの。今はもう子供やオタク以外そんなめんどうな作業はしてくれない。そういうシビアな状況において着ぐるみの特撮ってまだ有効なのかと。確かにそこに良さはあるし、それを見てくれる人はいると思うが果たして生き残れるかと。まあアニメもそうだが【50】

・昔マンガを描いたことはあるのだが才能ないので早々に諦めました【51】

・綾波のマンションのイメージは「70年代の地方都市のマンション」この辺だと多摩団地。大阪だと万博の頃の千里ニュータウン。今はあまりないと思うけど僕らの子供の頃、廃鉱になった炭鉱の周りってあんな感じだった。【55】

・団地は小さなコロニーですよ。僕も一時期高校の時団地だった。3年ぐらい。【55】

・一回3軒先が火事になったのだが妹と僕はそのまま寝ていた。ひどかったらあのまま死んでましたね。【55】

・(四月物語の団地の人たちの反応は現実だとあんなもんじゃないという庵野さん)田舎は一目だけですから。常に他人に監視されているのが田舎。東京に来て一番うれしいのは、誰も俺のことを知らないってことが大きい【58】

・大事なのは「何を見せたいか」ハズせないシーンってありますね。「それハズしたら作品全体がおしまいになってしまう」というシーンはどこなのか。映画を作る人はそういうのが見えないといけない。お客さんが見た時に「ああもう駄目だ」という醒めてしまう瞬間があるとしたらそういうことを考えていないシーンだと思う。予算は貧乏くさくても、一点豪華で「ここだけはなんか良かったなぁ」ということがあればいいと思うんですよ【67】

・(低予算ですごいものを作るという気概の話について)それは僕にもある。「これセル5000枚くらい使った?」「いや3500です」って言ってエーッって言われるのがちょっとうれしい【71】

・映画というのは嗜好品。コーヒー飲むのと同じですよ。なくても生きていけるわけですからね。(これは庵野さんたびたびよく言っている)【72】

・ラブアンドポップはEDだけ35ミリフィルムで撮った。台本に「フィルr無のありがたみを感じる客」って書いた(笑)(ラブアンドポップはデジカメで撮ってるため)【74】

・よく話題に出す「アニメの監督をするというのは船の船長をするのと同じ」という話がここでも出てくる【76】

・ダメージ・コントロールってえ日本が一番遅れてるところだと思いますよ。日本人には精神論がもとにあるから、最初に負けるイメージを持たないんですよ。負けた時にどうするかという発想がない【78】

・岩井さん「僕も庵野さんも日本映画界だけにいれば一生安泰ですよ」

庵野さん「1~2回コケても「先生この次こそお願いします」の世界ですからね。岩井さんの場合は『スワロウテイル2』を出せばいいしミヤさんには『もののけ姫2』もある(笑)僕も『エヴァンゲリオン2』で。ま、これは最後のキメ玉なんで、とりあえずとっておきますけど(笑)【79】

・アニメの学校だけは行かない方がいいかな(笑)それより自主製作やってる方がいいですよね【86】

・僕らはモノクロ・テレビを知ってる世代だから、モノクロのありがたみとカラーのありがたみ、両方身に染みて分かってると思うんですよ。あと8ミリ。【90】

・8ミリカメラを手にして最初にやったのがコマ抜きみたいなトリック撮影。ずっと上に飛び跳ねてるところだけカシャカシャ撮って繋いで(笑)そういうのからスタートしたんだけどそれなりに面白く見える。バタバタしながらもなんかこう動いて見えるっていうだけでうれしかった。そういう原体験って今でも残ってますね。そのおかげでまだやっていられる。【92】

・アニメ派最近袋小路に入っちゃった。たった30年で。伸びるのも早いけど潰れるのも早い。【93】

・最近の若い子たちに希望を見てる。今の中学生とか見てると何かやると思いますよね。今の女子高生なんてすごく洗練されてていいですよ。「15歳でこんなに頭良いんだこの子たち」と思ってしまう。たしかにあれだけの情報量の中でサバイバルやってりゃそうなるでしょうが。【95】

・アニメは制作費が低すぎる。でもアニメーションがなんとかもっているのはその製作費の低さのおかげ。ローリスク・ローリターン。【98】

・自社配給がちょっとずつ増えていっても良いと思う。(オフィス来たのは『HANABI』を配給通していないはずだという話題)(新劇場版にも通ずる話題)【99】

・今映画という文化が残ってるのはもう都市部だけ。映画館に行くとイベント館があるから。『ラブ&ポップ』も単館系にしてくれと言った。あれは田舎じゃ当たらないですよ。だから渋谷という場所で限定上映してくれと言った。渋谷見たことない人が『ラブ&ポップ』を見てもピンと来ない、リアリティ持てないと思う。だからあれは都市部向け映画なんです。【100】

・田舎は映画館行かなくても面白いものがいっぱいあるけど東京にいると映画・ゲーセン・カラオケぐらい。(これは庵野さん他の本でも時々言ってる)だから田舎じゃ映画館がどんどん減ってる【101】

・スポーツと音楽は万国共通だと思うけど、映像は国境を超えないと思う。言葉もそうだけど文化は国境を超えない。逆に、超えない文化だから注目されてる。「日本の映画ってこうなんだ」っていうところでよそさまは評価してくれてるんだと思う。だからアジアやアメリカやヨーロッパでウケるような媚びたもの作ったら逆に嫌われる。日本人は日本の文化しか作れないです。僕はアメリカに媚びる必要は何もないと思います。(確かシン・仮面ライダーの舞台挨拶でも似たようなことを言っていた)【102】

・今、日本のアニメーションがちやほやされて「ジャパニメーション」とか言われてるけどアニメがアメリカでウケてるなんていうのは幻想ですからね。実際にアメリカ行ったって日本のアニメはほとんどないですよ。ロサンゼルスの小さいお店に日本のアニメが飾ってあるだけで、ジャパニメーションなんてどこにもないですよ。ジェームズ・キャメロンとか日本に対して声の大きい人が兄絵mを見てるからアメリカではみんな見てると日本で勘違いしているだけじゃないのかと思う。【102】

・日本ほど総理大臣にこだわらない国ってないんじゃないですか。(シン・ゴジラでも描かれていた話)【104】

・エヴァはバブルだった。あれがヒットして、いつまでも人気が続くと思ってる人たちがいたのが信じられない。そういう人たちに「この人気、夏が限度ですよ。せいぜいもって年末くらいまでですよ」って言ってたんですけど。「いや、そんなこと言ってもらっては困る」って言われて(笑)。でも、いつまでも続くわけないですよ。いつまでもズルズル続いて、いつの間にかフェイド・アウトよりはスパッと自分たちでやめようと。だから、夏のタイトルが「THE END」なんですよ。これで終わりです。皆さんの中で終わってください。なんか、思い出として残していつまでも引きずらないでください。僕も割りましたと。あれは終局というか終わりの宣言なんです。【106】

・僕らは『ガンダム』や『ヤマト』のみっともなさを見てますからね。あんなみっともない真似は、自分たちはやめようと。再編集のリバイバル(『REVIVAL OF EVANGELION』のこと)は、最後のファン・サービスなんですよ。本来の形を最後に見せて、「いや、申し訳ない」と。自分たちで終わらせるっていう、幕引きっていうのが重要だと思うんですけどね。【106】

・日本人がなかなか「終わる」っていう感覚をもてないのは、戦後の復興があるからだと思う。たった50年でこれだけの力があるっていうのを見せつけられると「あれ、まだいけるかもしれない」って思いますよ。バブルがはじけて「もうダメだ」って言われて、まだイケてますからね。【107】

・「監督っていらないんですよ、本当は」「監督いなくても映画はできちゃいますからね」(これは庵野さんたびたび言っている)【120】

・各自が責任をとらないシステムを作るために監督がいるんですよね。つまり「責任とり係」ですよ。本来は現場にいなくてもいい。アニメとかけっこういますよ、名前だけの監督って。【120】

・制作の立場からいうと、監督が仕事しない方がスムーズでいいんですよ。監督が仕事するってことは、つまり「流れをせき止める」っていうことですから。【121】

・監督っていうと「作家」みたいなクリエイティブな感じやテクニックのイメージがあるが、僕は両方とも嫌いですね。ようやく「監督」と呼ばれるのに慣れて来たけど嫌だなぁと。他の人は名前で呼ばれるのに、なんで監督だけ「監督」って呼ばれるのか(笑)

・実写はある程度波に乗っちゃったら、監督はすることがない。むしろ現場に任せてる方がスムーズに流れていい。北野武さんが途中からキャッチボールを初めて「監督、今のカットは?」と聞かれたら「あ、いいの?オッケーオッケー」という話が合って、あれは分かる。僕も途中からそれだった。「手放していい瞬間」みたいなのがあって、あとはもう現場の人に任せる。【124】

・庵野さん「その代わり編集だけは手放さない」

 岩井さん「編集は面白いですよね」

 庵野さん「いちばんおもしろいところですよね」【125】

・映画がもし変わるとしたら、編集だと思う。極論を言えば一人で撮って一人で編集するのが理想。人に切ってもらうよりはとことん納得いくまで自分で切った方が気が楽だから。【126】

・映像って、一方的なメディアだから良いと思うんですよね。全部押し付けられるから。極端に言えばプロパガンダだけど、一方向メディアとしてはいちばん進んでいる部分だと思う。時間も空間もお供支配できるわけだから。漫画や絵画、小説や音楽も何かが足りないし、演劇も客によって場が変化してしまう。だけど映像だけは、とりあえず全部支配できる。あと残るのは触覚と嗅覚だけで。【129】

・ゲームみたいなインタラクティブは僕にはちょっとユルく感じられる。やっぱり一方的に押し付ける方がいい。ゲームみたいに客のことを考えなきゃいけないっていうのは、キビシイですね。お客さんの快楽はたぶんゲームの方が映像よりデカいと思うんですよ。でも映画は「見てる人と自分たちとの真剣勝負」みたいなところがある。そこで客に媚びるのはどうかなと。そういう体質にはなれないんで、ゲームができない。自分がゲーム文化で育ってないって言うのがあるかもしれないけど、性格的にもそこまでお客の反応を考えないですから。【130】

・いま人気のあるテレビのバラエティも放送作家の書いたものがどれももう限界がきてつまらなくなってきてる。先が読めたらもうオシマイになっちゃてる。だからバラエティもセミ・ドキュメントになってますよね。『電波少年』とか『メチャイケ』とか。最初の企画性と、芸人が面白いことをやるのをただ撮ってるだけのものになってれう。この先何が起こるか作ってる人間もお客さんも分からないというそういうハプニング性にしか刺激がなくなってるんだと思う。【131】

・こっちはシャレでやってても、向こうは本気に受け取ることってあるから。エヴァのいわゆる謎と言われている部分とか。でもそういう部分はケース・バイ・ケースで考えて作ってるんですけどね。ただ、こちらの許容範囲を超えて勘違いしてくるお客に関して対処するには、あきらめるしかないかな、と【138】

・岩井さん「庵野さんは言葉をすごく素材として使ってるような気がするんですけど」

 庵野さん「便利なんですよ。言葉の持つイメージって。」(ここで本には「だから殺した」や「みんなの、他の人のためにエヴァに乗るのか?」という25話のテロップを例に出している。(つまりエヴァのテロップ演出の多用は庵野さんが「言葉の持つイメージの便利さ)を意識している使っているということが伺える)【140】

・北野武さんの『HANABI』を見ての印象だが、「この人は言葉を全然信用してないな」と。信用してないから最後の「ありがとう」が出てくると思うんです。【142】

・便利だから、とくにアニメーションやってると言葉以外何も頼れなくなるところがありますね。(エヴァでテロップによる「言葉」が出てくるシーンというのは「それしかもう頼れない」からその演出を使っているのかもしれない。劇場版26話の「無言」とか)【142】

・(岩井さんが小説版スワロウテイルを書いたことについて)映画監督が自分の作品を小説にするのはイカンですよ。だったら、最初から小説だけでやれっていう(笑)ああいうのって、なんか自分の残りものの捌け口みたいな感じがしてダメなんですよ。映画に満足できなかったグチを、小説に置き換えるっていうことですからね。あとで小説出すくらいだたら映画にするな、っていうのが僕の中ではあるんですけどね。(岩井さん「僕のやつは映画化する前に書いてるんですよ(笑)」庵野さん「なら、まだオーケーです」)【144】

↑庵野さんが自分の作った映像作品の小説版を書かないのは恐らくこのスタンスで作品を作っているため。

・日本語の小説は改行のタイミングとかで読むリズムとかが出てくる。そういうのを考えてない小説はちょっと読んでて辛い。パッと開いた時の見た目の美しさを分かってるって言うのが僕は良いと思うんです。少女漫画にはそれがあるんですよ。ああいう繊細な感覚っていうか「いいなぁ」と思いますね。漫画でありながらイラストでもある。【147】

・エヴァに字幕が多いのは、ただ単に東方戦争映画とかの影響。あと岡本喜八監督。【147】

・極太明朝は元々は市川崑さん。アレはかっこいい。【147】

・字を出すと情報量が増えていいんですよ。とくにアニメの場合、なんか絵に力がないときには字幕を入れるとですね、江西真理が入っていい。客の視点を一度そこにくぎ付けにしてくれるし。いちばんシンプルな記号です。【148】

・庵野さん「記号と言えば岩井さん、チャリになんかこだわりがあるんですか?自転車に?」

 岩井さん「そうですね…まあ、好きですよね」

 庵野さん「僕もチャリに乗ってる女の子は、なんかこういいなと思うんです」

 岩井さん「わりと自転車と傘が好きで、しょっちゅう出てきます」

・女の子がチャリに乗ってる絵が好き。昔からそれには惹かれる。とくに田舎道。『ラブ&ポップ』もわざわざチャリのシーンは入れた。しかも3日もかけてる(笑)【149】

・AVの撮影を手伝った時に「俺ってそんなにセックス好きじゃないんだ」ってことに気づいてガーンと来ましたね【162】

・自分でハメ撮りができるか知りたい。【164】

・自分を追い込まないと何もできない。だからとにかくやってみたい。何が自分にまだ残っているのか、今のうちに知っておきたい。AV関係の人たちは今まで自分の周りにいなかったから、僕の中にもちょっとバカにしてたところってあったんですよ。しょせんAVでしょっていう。でもそれは思い上がりだった。僕より遥かにシビアでしっかりしてる人がそこにいて、すごいなぁと思いました。映像として見てる者もまるで違う。感覚や経験で叶わないと思いましたね。【166】

・自分はスケベじゃないんじゃないかと思ってて。性行為そのものに何かピンと来ない。それよりはもっと添い寝系(笑)。横で寝ててくれる方がいい。肌と肌の密着感とか好きなんです。【166】

・(クサい(感動的だがわざとらしく非現実的な)シーンについての話で)アニメは逆。そういうクサイことをやらないようにすると難しくなる。エヴァはそっち系。できるだけ生々しく使用、作り事じゃないようにしようと。キビシイですよ。(これは↑にもあった)【177】

・(岩井さんがナディアで一番感動したのが最終回のマリーと紙飛行機のカットだという話になり)ああ、じゃあ同じです(笑)。僕がナディアで一番グッときたのもあそこですから。あれは思いついた時にイケる、と。編集の時も、繋げて初めてその瞬間を見た時、「これで終わった」という実感を味わいましたからね。【183】

・『Love Letter』は映画技術の粋っていう感じがする。劇場で見損ねちゃってLDで見た。コンテ集は上下とも買った。今更だけどやられたなというのがけっこうあって、悔しかった。【183】

・『サンダ対ガイラ』はいまでもトラウマになってる。大学生になって見ても、やっぱりこれはすごい、って。怪獣映画で言えば、最初のゴジラの次にすごい。『サンダ対ガイラ』の両氏が海の中を見るとガイラの顔がてシーンが怖くて怖くて。(岩井さん「ハハハハハ。あれ、最悪ですよね(笑)」)【188】

・↑のシーンは友達がプールでガイラごっことしてやってた。今でも海を覗いてガイラがいたらどうしようって思う時がけっこうある。あと海の回想シーンで人が泳いでると向こうからガイラが泳いでくるじゃないですか(笑)あのビジュアルも怖いですよ。【188】

・ガメラ1は福岡ドームの福岡決戦までは本当に良い映画。CGでガメラが回転ジェットで飛んでいくときには泣いた。あれがベストショット。あれを見た時には樋口の仕事に感動した。彼があの仕事に己の人生をかけてた感じもあって良かった。あれは男の仕事だった。【190】

・『ガメラ1999』のメイキングを頼まれてて、ただ撮ってもつまらないから、特撮のルポルタージュみたいなのをやろうと思ってる。「なんでまだしがみついているのか」っていうのを赤裸々に書こうと【194】

・↑の件で岩井さんにインタビューさせてもらってもいいですか。(岩井さん「いいですよ」) ←GaZOVOL2のインタビューのことと思われる。【194】

・アイディアが思い浮かぶ時はバラバラ。風呂もあるしトイレもあるしチャリ乗ってる時、電車乗ってる時、本を読んでる時。つまらない映画もアイディアが出てくる。つまんない映画って考えるのに向いてると思う。退屈しのぎに別のこと考えるから。

・(「エヴァは庵野監督の個人的に体験の投影なのか」という質問に対して)なんかなぁ…個人的体験だけdが突出してピックアップされやすいんですよ。「こういうときこういうことがありまして、それをそのまま作品に生かしてるんですよ」ってのがいちばん言いやすいんですよ。それをまた、聞き手の方も欲しがってるし。あと他の事言ってもそこだけ載せるとか。それが記事として面白いと考えてる人が多いから。けど本当にそうだったら自分の自伝書けばすむわけですから。それじゃ面白くないからこういうことしてるわけで。僕の自伝が面白きゃ自伝でやりますよ。【197】

・(「ナディアが肉を食べないのは、庵野秀明自身が肉を食べないことと関係あるか」という質問に対して) 関係ないっす。↑で書いた屠殺の時の鳴き声だって聞いたの1回だけですから。高校の頃天文部にいて朝方まで街から離れたところで星を見てたんで。そういう山の方の空き地…そこ墓場なんですけど広い場所でなんかこう、墓場のど真ん中に寝たりとかして、天体観測やって。朝方になるとうすーく聞こえてきて。トラウマになんかならないですよ。自分では肉を食わない理由はさっぱりわからない。そう、生き物が大っ嫌いなんですよ。魚も嫌いだし、そういうものを食おうとは思わないですよ。犬も嫌いだし。まあいいのは猫ぐらい。猫は人間に寄ってこないから。まあナディアっていうのはキャラクターとして何か立たせなきゃいけないっていうことでああなったんです。NHKから来た条件が「動物と話が出来る」だったからそれに対してキャラクターを立てるための道具の一つなんです。【198】

・(「生まれ変わってもやっぱり映画監督になるか」という質問に対して) この仕事ってたぶん死ぬ頃には飽きてると思うんですよ。だいたい監督を目標にしたことがないんですよ。一度しか。まあもったいないって気分が大きかった。いいホンがあったんですよ。このホンがこのままつぶれるのはもったいないなあって。その方が大きかったんです。(再三語られているトップをねらえ!の話だと思われる)監督になりたいと思ったことはないし監督には向いてないと思っています。【198】

・(この時点では)銀行とか役所のアンケートで職業書くときは「会社員」と描いている。一応ガイナの会社員だから【202】

・僕は映像をやってるから自分の映画の開設は映像でやってりゃいいやと思うだけです。僕がこういうインタビューできちんと全部説明できるような人間だったら、映像づくりなんてめんどくさい作業はしてません。「この映画のテーマは何ですか」という質問は僕にとってはすごい愚問なんです。【204】

・AVに興味を持ったのは『ラブ&ポップ』のドキュメントにカンパニー松尾さんとバクシーシ山下さんが来たのがきっかけ。プロデューサーの山里さんが彼らの作品を観てて、この人たちのドキュメント性が面白いからって。【207】

・(「夢に出てきてうなされた作品は?」という質問に対して) 『悪魔くん』ですね。あとは『怪奇大作戦』。悪魔くんのマネキン人形の回がすごい怖くて。あと怪奇大作戦の人喰い蛾。あれから蛾が嫌いです。あと人形も昔から怖い。夜見れない。ただ、そういうパーソナリティが作品にベタベタな形で出てくるっていうのはありえないっす。エヴァの時はすごくそういう書かれ方をした原稿が多かったですけど。

・エヴァの時も作品世界だけじゃまとめられなくて、僕自身のことを利用して、無理に作品を批評した人が多かったですけど、分からないですよ、ホントのところは。マヌケな行為だなあと思います。登場人物って複合人格だし、だいたい、全く知らない人から理解されるほど僕の人生単純じゃないし。【Epilogue】

【感想】

「なぜ庵野監督は自作の小説版を書かないのか」という長年の疑問の回答があったのが良かった。(もしエヴァの小説を庵野監督が書き下ろしていたらエヴァ本編の理解にもかなり繋がってただろうなと長年思っていたので)あとこの本をきっかけとして初めて岩井俊二監督を意識して作品を数本見たのだが、岩井監督、天才です。

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ブックレット

Refrain of Evangelionブックレット

・劇伴のMナンバーに各正式なタイトルを付けているのは庵野監督。サントラ発売時に付けた【2】

・拾八話でバルディエルが初号機に攻撃するときに『THE BEAST』が流れるのは弐話の初号機暴走時と同じ動きから一部トレースしているのもあって、「同じ曲でのイメージの積み重ねによる恐怖心の増幅」という効果もあったとのこと。(解説者の感想なのかスタッフがそれを狙ったのかはこの文だけでは分からない)【2】

『THANATOS』とは死を擬人化した神のこと。フロイトの思想では愛や結合を求める生の欲動・エロスと対を成す、憎悪や破壊に向かう死の欲動のことを指し、生命現象はこの弐つの欲動の協力作用と反対作用から生ずるとされている【2】

・「ゼルエルの体の模様は、人間の横顔のシルエットを模しているとか・・・それを考えるとこれ以降、翼・光の輪・人間体と天使の姿を分割したかのような使徒たちがアスカ、レイ、シンジへと接触を試みたことへの布石にも思えます」と書かれている。(筆者の独自考察じゃないかこれ?)【2】

・Kanonの作者のパッヘルベルはバッハの兄の師であり、バッハ自身にも多大な影響を与えたと言われているが、DEATH編の後に25話の『Air』や『主よ、人の望みの喜びよ』を聴いても自然に馴染んでくるのはそのせいでしょうか。と書かれている【2】

・TV版では放送時期及び放送枠の変更の都合で、30秒フォーマットで制作されていた次回予告は15秒に編集された。(これは次回予告のナレーションのことではなく、次回予告の曲のことを指しているように受け取れる)【3】

・庵野監督は当初『韃靼人の踊り』(アレクサンドル・ボロディン。歌劇『イーゴリ公』より)をOPに使用するという構想もあったが、「クラシック曲ではTVアニメが始まったということが分かり難い」という曲側の判断もあり、見送られることとなった。【3】

・残酷な天使のテーゼは大月Pのコーディネーションによるもの(フィルム上ではノークレジット)。デモ段階では流れるようなメロディだったサビを歯切れよく刻むスタイルに変更するように指示。【3】

・残酷な天使のテーゼのOP使用に際しては、母性を象徴する歌であることを強調したいという庵野監督の判断により、男性コーラスがカットされている【3】

・『THANATOS -IF I CAN’T BE YOURS-』は元々「既存BGMを元に本格R&Bにリメイクするという、鷺巣氏がロンドンで行っていた音楽実験とでもいうべきものだったが、デモを聴いた庵野監督が即決で夏エヴァの主題歌に採用した。【3】

鷺巣氏は「こうした音楽さえも違和感なく取り込んでしまうエヴァンゲリオンの世界観の深さを感じた」と述べている【3】

・『閉塞の拡大』について、「TV版の先行編ビデオで監督が(TVアニメに拘る理由として)「閉塞感を打破したい」とコメントしていた。しかしエヴァブームは「一般社会全体の閉塞感とシンクロしたという側面」もあると思う。一見、アニメという枠を飛び越えてエヴァブームにはなったものの、世間に届いたというよりは世間が入り込んできたにすぎない…? ビジュアル的には開放感のある場面に対して(自嘲か皮肉かは置いておいて)、何かを意識的に表現したタイトルであると言えるでしょう」と書かれている(なるほどなぁ)【4】

・『Komm, süsser Tod』について、劇場版ガンダムⅢにおいて作品の総監督が作詞に関わる楽曲が完結編の重要な場面で流れるという使い方をされていたがエヴァにもそれが言える。『めぐりあい』の編曲をしたのも鷺巣氏だった。どちらもピアノのイントロから始まり、流麗なストリングスが高揚感を高めていく感動作です。と書かれている【4】

・『Everything You’ve Ever Dreamed』について、ここでは「『Komm, süsser Tod』と一緒に使われる構想もあった」と書かれている。(『Komm, süsser Tod』の代わりにではなく、フィルムにおいて両方の曲が使われる構想があったようにこの文章では感じられる)【4】

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アニメスタイル第1号 庵野監督ロングインタビュー

(インタビュー日時 1999年12月2日)

・エヴァの前にセーラームーンやVガンダムを見ていたのは「検証のため」(近代史の勉強に例えている)【78】

・セーラームーンの良さは「緩い世界観」。要は「遊び場を提供すればいいんだ」と言うことが分かった。
 個性的な分かりやすいキャラクター配置と遊べる場所が用意されていることでファンがそれを使って遊ぶことができる。それが人気の秘訣だと思った。
 (この時に小黒さんが「マコちゃんに好きな先輩がいたという情報はあるけれど、どんな人とかはわからない」とかですね。と返している(博識すぎる…)【78~79】

・エヴァでは世界観にブラックボックスを作るようにして、「そこは自分たちで考えて遊んでみてくれ」と言う風にしてある。【79】

・セーラームーンは「なんで、この人とこの人はこんなに仲がいいんだろう」という緩さもある。その理由もファンが考えられるようになっているのがセーラームーン。それがヒットの秘訣だったと思う。【79】

・綾波の方向性みたいなのを決定的な形にしたのは薩川さん。5話の脚本の段階で。綾波はどういう暮らしをしているか等の地に足が着く感覚は薩川さんが作った。
 あと貞本さんの包帯姿の画の力も大きい。自分は分からなかったけどやたらと評判が良かった。【79】

・エヴァは効率論で作られている。【80】

・エヴァの2話の戦闘シーンはあそこのシーンがうまくいかなきゃその話全体が成り立たなくなってしまうぐらい大事なシーンだった。超うまい本田さんと吉成さんがあっていて、当時できる
 最大限のシフトでやっているシーン。あそこがコケたら話にならんというシーン。【80】

・エヴァはタツノコと約束して基本的に平均3500枚でやっていた。2000枚で済む話があれば次の話数には1500枚投入してもいいというやり方。(3500枚はTVアニメの平均的な数字)【80】

・総集編を2本入れる。総集編に新作を入れてもいいけど、そのための新作は500枚以下で抑えるという枠組みもあった。【80】

・8話に枚数を使うために4話の枚数はちょっと少なめにしとかなきゃいけないとか。【80】

・6話は打ち合いでのタイムサスペンスにすれば基本的にはほとんど「止め」で済む。アクションをしなくても緊張感を持続できる。6話は作画を外注に出すのが決まっていたから、できるだけ作業面で負担をかけたくないのでそういう話にした。【80】

・コストパフォーマンスでストーリーも、スタッフ配分も行っている。全話そういう風に作っている。【80】

・アニメージュ90年4月号でも言ったがアニメというのは「穴の開いた船」。 沈む前に港に着けるかというそれだけ。そのために排水作業をどうするかという、ダメージコントロールでしかない。最悪の事態を想定してそれに対処するためのシフトを作っておくだけ。それは組織論の基本。そしてそれは軍艦の運用思想(軍艦は敵の弾が当たって沈むというのを前提に作られている)と同じ【81】

・「アニメというのは情報なんだ」というのは山賀さんが王立の頃に言っていたこと。「庵野監督の制作運用的なものは王立の時に山賀さんがやってたのを踏襲してるだけ」とのこと。【81】

・王立はものすごい画の密度の情報量で客を圧倒するっていうのが狙い。【81】

・王立とは違いエヴァは基本的には地続きの感覚を残そうとして作っている。(現在の日本の延長線上の世界だということ)【81】

・現在の延長にすれば記号的に楽なんですよ。電柱を見せれば「見たことある」と思い客は安心する。緊張しない。そういう効果もある。【83】

・SFに出てくる電話はおいてあるものを説明するために「もしもし」と言わなくてはならないが、緑色の公衆電話を見せればみんな「電話だ」と認識する。それは客の認識力に対するコントロールである。【83】

・エヴァは「分かるもの」と「分からないもの」を意識して分けて作っている。 制作側が「これは分からない方がむしろありがたい」というところは分からないように作っている。
 死海文書だとか「そうか、そういうことかリリン」というセリフも「今カヲルが言ったセリフはよくわからない台詞なんですよ」という意図した情報であるということ。
 それに関してシンジが「よくわからないよカヲル君」という客の気持ちを代弁するというところは親切な作りである。「分からないことを言っているんだ」ということが分かりやすいため。【83】

・エヴァはビデオで録ってみる見るということを前提に作ってある。【83】

・だから、OPの情報量を多くした。細かく作った方が良いだろうと思った。そして、歌詞の一文字に対して1枚の画ぐらいの細かい曲合わせをやってみた。見た目の気持ちよさを優先した【83】

・近藤喜文と高畑勲という二大巨頭が組んであれだけの時間と手間をかけて作った『おもひでぽろぽろ』が自分にとって何にもリアリティがなかった。
 「セルアニメで細かいところを動きまで作って表現しようとしてもそりゃ実写には敵わん。そういう方向性は無駄だ」と気づいた【84】

・4話でミサトがシンジに激昂するシーンは「見せないで表現する」方法を取った。最初のフィルムではあそこでミサトの表情を見せていたが、「でもねぇ…なんかなぁ…表情変化もさして無くですね、三枚の口パクで、喋ったところで…」と思い三石さんの芝居に賭けた方が良い、顔を見せない方が「どういう表情をしているんだろう」と客が想像してくれるから表情をBLでつぶした【83】

・あそこは中途半端な潰しだとダメ。あそこまで黒くすることで「あっ、これは顔を見せたくないだ」という意図を分かってくれると思う。「ミサトさんは、いったいどういう顔をしているんだろう。怒ってるけど、悲しいんだろうな」とか想像してくれる。その想像した瞬間はセルアニメの限界を超えてると思う。【84】

・前述のミサトの顔のカットもそうだが、描かないことでその人が想像できる最高のものをそこに当てはめてくれる。想像の余地を残すということは必要なことだと思う。【84】

・音楽がかかると視聴者が安心してしまう。だから4話は音楽をわざとかけなかった【84】

・4話ラストでミサトとシンジが見つめ合うシーンでかかっている曲はバックノイズ。あのシーンはBGMだと保たない。あそこでバックノイズとして歌謡曲が流れると歌詞を聞き取ろうとする心理が働く。歌詞を聞き取ろうとしてしまうことで緊張が生まれるのを狙っている。【84】

・24話で第九がかかるのは「聞きなれたクラシックがあんなに派手にガンガンかかっていると見てる人間はそれに流されていく。それでテンションが上がっていく。第九は人の声だしものすごくテンションが高い。そういう風に感情的な部分やテンションまでコントロールしている【84】

・24話でイヤホンから流れてくる曲も第九なのは「中途半端はやめよう。徹底的にやろう」と思っていたから【84】

・エヴァ全体に関して「徹底的にやろう」と思っていた 【84】

・(22話のアスカと綾波のエレベーターのシーンについて)リアルに考えればもっと長い間になるんだけどアニメだとアレぐらいの間でも長く感じてくれる。実写だったら40秒の間なんてよくあること。間の内に入らない(実際にはあそこの間は50秒) 【84】

・夏エヴァの時は世の中の文字が全部明朝になっていたので「これはやめよう」と思い教科書体に変えた。(THE END OF EVANGELIONのタイトルやポスターの事) 【86】

・エヴァ明朝体の演出は「Mac様さま」とのこと。細かいところまで作れるし文字の変形もスゲェ楽。データをそのままフィルムで出力できるのも良かったといいことづくめだった。【87】

・実写は「アニメと違うもの」「異質なもの」というぐらいの印象しかない(イメージオンリーで作られているアニメの画との対比) 【87】

・他の媒体で言ってるのかは知らんけどガンダム5話(大気圏突入回)の予告をベタ褒め。かっこいいじゃないですかとのこと 【90】

・Vガンダムの予告はナレーションが本質の部分を言っているところが良かったですねとのこと。 【90】

・1stガンダムでアイキャッチが入るタイミングにはかなり影響を受けたと思うとのこと(9話でアムロの台詞の後にアイキャッチが入るところを見て「カ…カッコイイ」とのこと) 【90】

・カットが切り替わる時の気持ち良さにはこだわった。(カットに右に顔→左に顔→疲れてきた頃に真ん中にポンという手法等とのこと)【90】

・アニメはカメラが顔に寄ったらそれだけ情報量が減っちゃうからエヴァの場合は顔のアップをほとんどなくしているはず。(普通のアニメは顔のアップが多いから情報量を足そうとしてディテールが増えたりしがちとのこと)【90】

・エヴァの付け入る隙は「アニメなのによくできている」ところ(当時は現代よりもアニメは下に見られていたため)【91】

・「アニメだから見ない」という一般人のハードルを越えようという意識がエヴァにはあった。「この作品の話をしても恥ずかしいようにはしない」という具体的な目標もあった 【91】

・幾原さん「最終回で綾波レイが妊娠して、腹がデカくなっているというのをやってくださいよ。綾波ファンを裏切ってくれ。ホントだったら妊娠して腹がデカくなって子供産んだりして、
 年を取ったりするんだっていうのを思い知らせてやってくれ」みたいなことを言われて「そこまでせんでも・・・」と思った(笑)(庵野監督自身がそれを見たくなかったとのこと) 【94】

・もともと綾波は巨大化させるつもりだった(苦笑) 【94】

・「グロってあんまり好きじゃないんですよね」(えぇ…)【94】

・弐号機VS量産機戦は原撮の方がセルよりも迫力があってよかった。(一部がAirの予告に使われている)アフレコの時に緒方さんが「うわ~、エグ~イ」と反応していたが、完成したのを見た後に「あそこ、あんまりエグくなくなっちゃいましたよね」と言われて庵野さんもそう思ったとのこと 【94】

・バルディエルをダミーがボコボコにするシーンは「メシ時に見てる人が吐く」のが理想だったがセルだとなかなか嫌悪感は出ないなと感じた。【94】

・庵野さんが実写を撮ったのは「とりあえず川岸を変えてみよう」「ここの居酒屋、メニューの品を全部食べたから新しい店行こう」という感覚だった 【95】

・ワカメ影は古いと思ったのでエヴァでは全部修正した 【96】

・庵野監督の音のこだわりの話あり(DTS版劇場版DVDのブックレットやリニューアルDVD作成時のニュータイプへの寄稿でも同じことを言っている)【96】

・マクロスの時は影をいっぱい入れて金属の質感にこだわってやってたが、王立の頃あたりからセルにそれを求めるのはやめて音に賭けようという考え方に変わった【96】

・アニメーターは役者とカメラマンと画描きの3つの役職を同時に兼ねないといけないからすごく大変な商売(他のインタビューでも時々言っている)【97】

・カレカノの信号機のカットは心象風景を表している。黄色は「不安定」(どっちにしようかなってイメージ)赤は「止まる」青は「レッツゴー」【98】

・アニメファンとかその辺の人のポピュラリティは「メカと美少女」。メカと美少女さえ出てれば、基本はOKですよ。それは30年以上変わっていない(否定的ではなくて肯定的な言い方をしている)【98】

・カレカノもラブ&ポップも「メカと女の子」(電柱とか信号機とかがメカの部分) 【98】【99】

・ラブ&ポップで電柱を撮っている時は楽しかった【98】

・(変なアングルについて)ああいうカットを撮るのは「日常を見せるにしても普段見えない角度から見れば、非日常的なものとして映るから」【99】

・「『もののけ姫』にはフェティシズムがない」という話になったときに小黒さんが急に「ピカチュウってフェチっぽくないですか?」と言い出し、「ピカチュウのいいところはデブなところだよね。抱き心地が良さそうだよね」とか庵野さんが言ってる。
 「あれが細いとなんかもう一つだっただろうね」とも(先見性高い)【99】

・映画で基本的に興味の持続を指せることができるのは「この人は一体何をするんだろう」ということと、次は「どういうことが起こるんだろう」という2点 【99】

カテゴリー
ブックレット

リニューアルDVD DTS版ブックレット 庵野監督インタビュー

(インタビュー日時2004年9月25日)

・5.1chサラウンド化の動機は「自分の家のリビングで5.1chサラウンドを聴いてみたかったから」

・リメイクにはもうそんなに興味がない(2004年9月時点では)

・『プライベート・ライアン』のノルマンディー上陸作戦はすごくて効果音でここまで表現できるのかという衝撃があった。

・あるとき必要があってエヴァのTV版をかけてみたら当たり前だが2.0chなのですごく寂しい思いをした(笑)
 そういう経緯もあって5.1chサラウンドには何ができるのか興味を持ち、今後の音作りの勉強の意味も含めてやらせてもらうことになった。

・TV版制作時は「せっかくステレオなんだから」ということで音の定位などにこだわって作っていた。そのため、当時は「『エヴァ』は14インチのTVではダメで、スピーカーが左右についた27インチ以上のTVで観てほしい」とよく言っていた。

・映像と音どれぐらいの比率で観客に作用するかには諸説あり、7:3だという人もいますが、僕は5:5だと思ってます。

・エヴァの効果音に関してはナディアからお願いしている野口さんなので信頼を置いていた。

・庵野さんから出した注文は2つ。1点は「質感が分かるようにしたい」ということ。もう1点は「音で使徒などのキャラクターを表現してほしい」(ウルトラマンの宇宙人や仮面ライダーの怪人のように「音がしているだけでそいつがそこにいると主張するようなもの」とのこと)ということ。

・エヴァ本体の音は「動作時には金属ワイヤーを束ねたものが筋肉として収縮するような音」にしてくれとお願いしている。

・ラミエルの音は帰ってきたウルトラマンの光怪獣プリズマがヒントになっている。合わせて女声コーラスを重ねて存在感を主張している。

・情緒を動かしたり情感を盛り上げたりする場合に音楽のちからを最大限使わせてもらっている。

・選曲は極力自分でやるようにしている。

・ハリウッド映画によくある、「カットに合わせて細かく刻んでいった劇伴的な音楽はあまり好きではない(音楽が映像にすり寄った感じを受けるので。音楽は音楽だけで成立していてほしいと感じる)

・エヴァに限らず発注したとおりに音楽を使うことはあまり考えていない。(こちらが持っているイメージ通りに音楽ができてくるとは限らないし、あまり音楽のイメージを初期の段階で固定したくないから)

・音楽は、まずあげてもらってからそれを聴いて、改めてどこにどうはまるかを考えた方が良い結果になる。

・この曲はここしかないって時は「映像の神様」がちゃんといてくれて、偶然ながら画と尺がピタリと合う。

・音楽は初めから計画して当て込むより、その天命っぽいほうが僕は好きですね。

・スケジュールさえ許せば、音楽に合わせて画の方を編集している。

・映像は音楽合わせの方が生理的に心地いい。夏の劇場版は極力そうしている。

・「アニメ声」ではなくエヴァでは生っぽい芝居を要求した。(画面がある種のリアルを抱えているので、記号的なアニメっぽい喋りは合わないため)

・台詞も「本心からの吐露か、嘘を言っているのか」など額面通りに台本を読んでちゃできない非常に複雑で難しい芝居をしてもらっている。

・キャラの魅力はキャストに大きく左右されると思う。

・(作品によりけりだが基本的には)作業はものすごく大変になるがセミプレスコがベストだと思う。
 (画ができたる→アフレコをやる→芝居に合わせて編集し直したり口パクを合わせたりすること)

・芝居が良ければ画の表情を直すぐらいのことはやりたい。

・エヴァはスケジュールの都合上完全アフレコ制だったので、「台詞に情緒が欲しい時」や「役者の芝居に賭けたい時」とかは背中とか引き画のオフ台詞とかを多用している。
 理由は、キャラの画の表情や口パクの長さなどで芝居を委縮させたくなかったから。芝居の自由度を極力上げたかったから。

・画の力と音の力、両方がうまく合わさっていた時に、面白い映像はできているんだと僕は考えます。

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その他書籍

エヴァ・エース 「庵野秀明スペシャル・ナイト」インタビュー

(2003年7月18日 新宿ミラノ座で行われたイベント)

・リニューアルDVD制作にあたってエヴァが完結して6年ぶりにTVシリーズと映画を見たが面白かった。「ああ、これはウケるわ」と思った。これ僕が作ってなくて他の人が作っていたら、僕はハマりますね。

・(劇場版について「ぶっちゃけていうとあれはどういう話なの?」と聞かれて)「最終的には、いいじゃん、他人がいても」ということですね。

・エヴァは「僕と同じ感覚の人にとっては面白く感じると思う」とのこと。

・「一つの作品でもその人の取りようによって全然違うと思う。エヴァが嫌いと言う人も好きと言う人もいる。100%の人に好きだと言われるとちょっと怖い。賛否両論と言うのは一つの作品にとって健康的でいいと僕は思いますよ。」

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原画

劇場版原画集気になったとこまとめ

・弐号機VS量産機戦のようにめちゃくちゃに暴れてもジオフロント内で地面に足が沈みこまないのは『エヴァが移動を想定できるすべての施設に対応が計られているから』「グラスファイバー等の強化材のほかにパッシブに磁場を発生する装置が施工されている」とのこと。(弐号機VS量産機戦描いてる人の俺設定だと思うが…) 【劇場版原画集上巻 225】

・人類の補完が始まり、量産機から無数の綾波の顔が出てくるカット もっと醜い感じの顔で作監は描いていたが、庵野さんから
「すみません。あくまで美少女のイメージというか面カゲをよろしく(記号的美少女がゆがんだ感じで)」との指示あり。(アレで一応美少女意識してたのか…)【劇場版原画集下巻 79】

・補完計画でカヲルを見つけたシンジの顔について 庵野監督から「表情柔らかくよろしく。救いに出会ったよろこびで」との指示あり。 【劇場版原画集下巻 85】

・シンジの過去回想で出てくるセットみたいなやつ 庵野監督コメントで「スタジオセット風 急場のたて込みの感じです」 【劇場版原画集下巻 95】

・アスカの「イライラすんのよ!」の顔 庵野監督から「目を見開いてちょいヒステリックに」 「すみませんハダカでよろしく」 「騎乗位でSEXの最中に言われてるイメージ。そんなん言われたらしぼむ」とのコメントあり。 【劇場版原画集下巻 98】

・シンジの「自分みたいで?」のシーン 「ポツリとボソって言う感じ」 「コンテと変わってすみません。こちらでよろしく」との指示あり。
コンテと変わってすみませんと書いてあるのは、コンテ段階ではシンジとアスカのセックスのイメージはなかったため。【劇場版原画集下巻 99】

・シンジがミサトさんと加持さんのセックスを見ているカット 「前カットとのつながりを考えると扇風機の後ろは窓なんですけどシンジはうす暗がりに居てほしいのでこれでお願いします」とのコメントアリ。(シンジがうす暗がりにいることすら意味があった) 【劇場版原画集下巻 101】

・セックスシーンのミサトさんの足 「大変ですが生々しくよろしくです」とのコメントアリ(たぶん庵野さんコメ) 【劇場版原画集下巻 109】

・アスカ「救ってやれると思ってんの」のとこの舌ペロ 「舌の動きでなまめかしさがだせると面白いかも・・・」「うすく口びる色を入れる?」 「このあたり演出と要相談入れてください」との庵野さんコメントあり。 【劇場版原画集下巻 115】

・アスカの舌ペロのシーンの原画 「ワンスアポンアタイムイナメリカ」で何とかって人が男の〇〇〇を品定めするシーンで
こうペロ・・・と舌を舐めるってのがありましたな。アニメではむずかしすぎ」というコメントアリ。庵野さんのコメントかどうかは不明。 【劇場版原画集下巻 117】

・電車の中でアスカの「アンタが全部私の者にならないなら(ry」のシーン 「シンジのモーソーなのでいつもよりオッパイ大っきい?」とのコメント (えっここシンジの妄想なの?) 【劇場版原画集下巻 126】